「黒子くん」
部活の休憩時間。
ベンチに座ってふかふかのタオルで汗を拭っていると、マネージャーのみょうじ先輩が僕の目の前で仁王立ちで立っていた。
「みょうじ先輩、どうかしましたか?」
「ねぇ、隠し事してるよね」
「え?」
「右足、出しなさい」
みょうじ先輩はそう言うと、右足を掴むと僕のバッシュを引っ張った。慌てて抵抗するが、バッシュは脱げた。今度はソックスを追剥のように引っ張るが右足から滑り落ちていった。
「あーほら、ここ、青くなっているよ」
「これくらい大丈夫です」
みょうじ先輩がわざとあざの部分を触り、僕は情けない叫び声を上げた。あまり大声をあげないからか、火神君や先輩たちが心配そうにこちらを見る。ため息を吐いたみょうじ先輩はどこからか出したコールドスプレーを吹きかけると手際よくテーピングを巻いていった。
「よし完了。はい、靴下」
「ありがとうございます」
「今日は見学ね。リコには私から言っとくから」
「はい」
「黒子くん、拗ねないでよ」
「拗ねてません」
嘘。本当はバスケがしばらくできなそうでいじけている。
でも、みょうじ先輩にはそれがお見通しらしく、コールドスプレーを頭に吹き付けられた。
「たまには甘えてよ」
みょうじ先輩はそう言うと、休憩終了のホイッスルを鳴らした。