不良くんと真面目ちゃん

朝から低血圧で辛いのに、キャプテンが「朝練休んだら、練習禁止」と、真っ黒い笑顔で言うもんだから、歩く度に欠伸をしながら学校へ向かっていた。

「ゲッ」

校門まで残り50m付近で風紀委員が居ることに気が付いた。
しかも一番うぜぇみょうじなまえが仁王立ちしていた。
と言うか、入学式初日にサッカー部のセカンドチームをフルボッコにしたお陰でこの服装違反は、他の風紀委員は何も言わない。
が、みょうじは俺を見つける度にガミガミ文句を言う。
しかも、服装違反の懲罰である放課後の美化活動にリーチがかかっている。

「面倒くせぇ」

襟足あたりを掻くと、学校を囲む塀を飛び越えた。

「チョロいぜ」

サッカー棟からは遠回りだが、放課後の練習が出来なくなるよりはまだマシだ。
みょうじにバレないようにサッカー棟へ向かうとしよう。



―――ピィィィィ!

草木を掻き分けて、サッカー棟前に出ると、耳障りなホイッスルが辺りに響いた。
耳を押さえ、ギュッと目をつぶった。
低血圧の頭に酷く響く。
ホイッスルが鳴り終わり、目を開くと、左腕に『風紀委員』と刺繍された腕章をつけたみょうじが立っていた。

「1年、剣城京介。服装違反です。生徒手帳を出しなさい」

「なんで此処にいるんだよ!さっき、校門前にいたじゃねぇか」

「剣城が塀を飛び越えた所を見たので、どうせこんな事だろうと思って先回りしました」

みょうじは催促するように、右手を出した。
俺は生徒手帳を出し渋っていると、再びあの耳障りなホイッスルを鳴らした。

「うるせぇな!出せばいいんだろ!」

生徒手帳を地面に叩きつけた。
みょうじは、それを拾うと生徒手帳の服装違反チェックのページに5個目の判子を押して、「今日から1週間、放課後の美化活動頑張ってね」と、言って戻っていった。

ってオイ、俺の生徒手帳返せ!!



不良くん真面目ちゃん



「うるさいぞ!今、サッカー部は朝練中だぞ!…って剣城か」

「いや、キャプテン。あのうるさいホイッスルは風紀委員です」

『風紀委員』と言う単語に、キャプテンは眉を寄せた。
そう言えば、キャプテンは、部内で校則に厳しかった。
服装違反で1週間、放課後の美化活動やることになったと言ったら只じゃ済まないな…。

「風紀委員がどうした」と、キャプテンは聞いてきたが「何でもないです」と、言ってサッカー棟に入ったが、昼休みにみょうじから詳細を聞いたキャプテンに雷を落とされるのはまた別の話。

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