文化祭で女装する宮地を書きたかった。正直すまなかった。

「お前ら、ぶっ殺ス」



いつもなら迫力ある宮地の暴言は全く凄みがない。高尾は堪えきれず吹き出して、木村はそれにつられ笑い出して宮地の青筋はピクリと動いた。
宮地は今、秀徳のセーラー服を着て、可愛らしくメイクアップされている。ちなみにこのメイクは私がやりました。
イケメンでも可愛いに分類される宮地は、本当に可愛らしい。だけど、身長191cmである。



「宮地サン…ヒヒヒヒヒヒもう無理真ちゃんハハハッ助けてブハッ」



もう高尾は笑いすぎて呼吸がおかしい。
緑間は眼鏡のブリッジをあげて、ため息を吐いた。手首にはラッキーアイテムの水玉のシュシュをつけていて、高尾はそれにツボったらしく、「真ちゃん水玉ブハッ」と笑いだした。



「高尾、今すぐ轢き殺す。木村」



「すまん、宮地。今日はお前の味方になれない」


「木村ァ!」



いつもなら宮地に軽トラを貸す木村は、ケラケラ笑いながら、宮地の女装姿を携帯で撮影した。その撮影音ですら高尾は面白いのか「ピロリーンピロリーン」と言いながら笑っている。もう高尾はダメかもしれない。



「宮地、お前がバスケ部の命運を背負っているんだぞ。シャキッとしろ」



大坪はいたって真面目に宮地に檄を飛ばすが、宮地はもう反論するのを疲れたのか、深いため息を吐いてしゃがみこんだ。
今日は、3年に1度の秀徳高校文化祭である。そして、我が校文化祭には変な行事がある。
「ミス秀徳」…と聞いたら、女子が参加するコンテストとかを想像すると思う。だけど、数十年前まで男子校だった秀徳高校は、男子が女装をして「ミス秀徳」を決めていた。それは共学になった今でも伝統として残っている。宮地はその「ミス秀徳」に参加するために女装をしているのだ。

そして、大坪が「真面目にやれ」と言ったのは、優勝すると部費がアップと単純なことである。



「宮地」



しゃがみこんで、意気消沈している宮地に声をかけると、睨まれた。だけど、女装して、化粧して可愛らしい宮地は全く怖くない。



「んだよなまえ…」



「ナイス腹筋!」



宮地のセーラー服の裾を捲ると、

「お前ら、絶対に許さないからな」と叫ぶが、ずっとお腹をかかえて笑っていた高尾が宮地のスカートを前からおもいっきり捲り黒いパンツをバスケ部員に公開してしまった宮地の絶叫が部室に響いた。



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「キヨコー勝ちにいけよー」

「部費アップの為にも負けるなよキヨコー」

「キヨコサーン!ファイトーぶはははは」

「人事を尽くしてください、キヨコさん」

ミスコンの時間が迫っていたため、私と宮地はみんなに見送られ、会場の体育館へ向かった。散々いじられた宮地は不機嫌そうにそっぽ向いていた。茶化すように「キヨコー」と呼ぶと「死ね」とすぐに返ってきた。

「でも、本当に可愛いよ」

「なまえの方が可愛いから」

顔がかーっと熱くなるのが分かる。ばっか、突然デレるなって。

「な、なななな何突然!?」

混乱してあわあわしてる私を宮地は満足そうに笑うと、宮地の大きな手は私の頭を掴んだ。

「ま、俺が可愛いのはお前のお陰だ」

宮地はそう言うと、私の頭をくしゃくしゃと撫でた。ボサボサの髪の私を見て宮地は「やっぱり俺の方が可愛いな」と言って笑った。

「宮地」

「分かってる。人事を尽くしてくっから」



こうして宮地は並み居る強豪を抑えて、ミス秀徳を受賞した。宮地の女装姿は、女子だけではなく男子の心をがっちりホールドした為、バスケ部の練習のギャラリーはむさ苦しくなったのであった。それに宮地が発狂して、体育館に彼の暴言が響くのは時間の問題。

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