「とりっくおあとりーとー」
私の目の前には、2mを越えたなまはげが両手を差し出していた。しかも、英語を喋るだと…なまはげも国際的になったものだ。
「紫原、その格好どうしたの」
なまはげ、もとい紫原に問いかけると、「お菓子くれない悪い子かー」と拳をあげたが、「暑いしー」と言って鬼の面を外した。
「#name3#ちんのってよー」
「いや、今日はハロウィンって知ってるけどなんでなまはげなの」
「着れるのがこれしかなかったからー似合う?」
「うん、大人も泣くぐらいの迫力があるよ」
「じゃあ、お菓子ちょうだい?」
普段のめんどくさそうな表情とは違い、とても笑顔が弾けていた。首をこてんと傾げてあざとさがアップ。しかし、身長208cmのなまはげだ。
私は鞄から、紫原の好きなまいう棒の詰め合わせを取り出すと、紫原の大きな両手の上に置いた。
「ありがとう#name3#ちん」
「何となく紫原が催促に来るだろうとは思って」
「えへへー」
紫原は図体に似合わずふにゃりと笑った。そして早速、詰め合わせから1本取り出して食べ始めた。
「今日は沢山お菓子もらえると良いね」
「うん」
その後、陽泉高校ではなまはげがお菓子を求めて学校中を駆け回り、生徒を泣き出すのが多発。それ以来、陽泉高校の校則に「校内でなまはげの格好は禁止」と追加された。
Trick or Treat!