エース様の指を舐める

緑間の指は綺麗だ。
男性らしい骨ばった手だけど、ピアノを嗜んでいたらしく細長い。そして左指を保護するように巻かれたテーピングが、神秘的で性的魅力を感じる。
つまり、緑間の指を舐めたい。全力で。

「緑間、指貸して」

直球に聞くと、真剣に爪を磨いていた緑間がキッと私を睨む。そして「何を言っているのだ、お前」と眉を寄せた。

「緑間の指を舐めたい」

「気持ち悪いぞ、みょうじ」

「なんでー?ペロペロするだけだよ」

「理解に苦しむ」

「ね、お願い」

可愛らしくおねだりしても、緑間は軽蔑するように左手で眼鏡を押し上げると鼻で嘲笑った。もう、我慢できない!

「緑間」

私は緑間の右手首を掴むと、口許に引き寄せた。手の甲にキスすると、緑間の肩が跳ねあがった。緑間の肌はなめらかで、微かに石鹸の香りがする。唇から伝わる緑間の体温は少し冷たい。ふっと見上げると、緑間は顔を赤く染め、身体を強張らせていた。

「緑間って冷え性なの?」

「ち、違う。少し体温が低いだけなのだよ」

緑間の手の甲から唇を離してそう聞くと、ぶっきらぼうに答えて顔を逸らした。緑間は「もういいだろ。放せ」と言うが、私は緑間の人差し指を舌先で舐めた。人差し指の腹を舌先で弄ぶ。そして、指の先から指の根本まで舌を這わせた。ほんのり汗の味がする。緑間は手を引いて抵抗してきたので、口を開けて緑間の人差し指を根本までくわえた。

「みょうじ!?」

口内で緑間の指を堪能するように舌を絡めたり、舌先で爪を焦らすように舐めたり、唾液が泡立つ音をたてながら舐めた。見上げると、緑間は小さく「変態」と呟いた。変態上等だ。人差し指を引き抜くと、親指、中指、薬指の順に舐めた。その度に緑間は小さく反応するから面白い。
一通り舐めたら私は満足して緑間の手を解放した。緑間は持っていたブルーのハンカチで手を拭くと、呆れたようにため息を吐いた。

「お前がこんなに変態だったとは思わなかったのだよ」

そう呟いた顔は少々憔悴していた。私は、「ごちそうさまでした」って少し嫌味っぽく言うと、緑間は私の左手首を掴んだ。

「な、何?」

「仕返しなのだよ」

緑間は私の手を口許に寄せると、意地悪そうに笑った。

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テーマ「人外ファンタジー」
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