06:未来永劫の独占欲

 実弥さんとの行為の後、鏡を見るたび思う。
彼はとにかく、体中にキスマークをつけたがる癖があるようだ、と。

「マーキングだァ」

 その理由を問えばそう返された。
 それにしても数が多すぎませんか? 付けるとしても二、三個で十分だと思うのですが。

「お前が俺以外に正体を隠して、山奥の森の中で一人で暮らすなら、印を付けるのを止めてやってもいい」

 はい? 何ですか、その条件は。

「それは止める気はないということを、遠回しにからかって言っているのでしょうか……?」
「違ェよ。正当な条件だろうが」
「今の話のどこがですか……!?」

 立ち上がろうとするも、強く腕を引かれ再びベッドへと戻される。見上げれば昼間とは違う色気を宿した実弥さんの顔。
 ああ、ほらダメ。この顔に見つめられたら身動きが取れなくなってしまう。

「平和な世界なのはいいが、お前を見る男共が格段に増えたことだけは気にいらねェ……」

 そう言って実弥さんは、重ねるように印をいくつも付けていく。

「っ……実弥さん、ダメ」
「またシたくなるか?」
「分かってるなら、も……っ」
「分かってるからしてんだよ」

 体中に刻まれていく。
 実弥さんなしでは生きられないように。
 もうそんな必要などどこにもないのに。だって私は貴方に出逢ったあの日から──。





「実弥さん、夕食はこの前お話していたレストランでいいですか?」
「ああ。お前の好きなところでいい」
「その前に少し……ああ!」
「どうしたァ?」
「さ、実弥さん……! これ……ここっ、首!」
「俺のせいじゃねェよ。んな胸元が空いた服着てるテメェが悪い」
「わざと見えるところに付けましたね……? せっかくのデートなのにどうするんですかぁ!」
「この前ここに置いていった服があっただろ。あれを着ろ」

 手際よく服を渡され、こうなるようにわざとキスマークを付けたと確信する私なのであった。


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