05:いつかの未来の貴方は

 寝る直前、布団に入る前に義勇さんが、結っていた髪をほどく。
 それは私の大好きな瞬間でもあった。

「どうかしたか?」
「あ、いえ。髪を解く姿がカッコいいなぁと見惚れていただけです」
「何だそれは……」
「ちなみに髪を結う義勇さんも、とてもカッコいいんですよ? それはもう男の色気が凄く出てて……」

 義勇さんの好きなところを力説すれば、もういいと言って腕を引っ張られた。
 どことなく照れた様子の義勇さんに、今度は思わず可愛いと思ってしまう。

「そういえば義勇さんの短い髪をした姿は、まだ見たことがありませんね」
「……短い方が好きか?」
「見てみたいなとは思いましたけど、どんな髪型をしてようと、義勇さんが大好きなことには変わりないですよ」

 短い髪の義勇さんだってきっとカッコいいのだろうけれど、もちろん今の長い髪の義勇さんだって大好きだ。
 義勇さんの髪をするりと掬う。

「義勇さん、他の人の前で髪を結ったり解いたりしたらダメですからね」
「何故だ」
「それは私だけが知っている義勇さんであってほしいんです。他の人には見せたくありません」

 こうして髪に触れるのだって、側にいる私だけの特権だ。そもそも私は常々義勇さんを独り占めしたいと思っているのだ。

「いつか髪の短い義勇さんにも会えますかね?」
「そうだな……全ての戦いが終わったら短く切ってもいいかもしれない」
「本当ですか? それなら尚更死ぬ訳にはいきませんね」
「心配するな。お前は絶対に死なせない」
「私だって義勇さんを絶対死なせません。最後まで全力でお守りしますからね」

 いつかの未来で鬼のいない世界がやって来るだろうか。
 その時までこうしていつまでも側にいられたら。そしてこれからも、もっと色んな義勇さんに出逢えたら。

「戦いが終われば髪を切る前に、お前を嫁に貰うという約束を忘れてはいないだろうな?」
「義勇さんの……お嫁さん……!」
「忘れていたのか?」
「いえ、もちろん覚えていますけど……! 義勇さんのお嫁さんっていう言葉だけで嬉しくて死んじゃいそうです……」
「死ぬ訳にはいかないんじゃなかったか?」
「だって義勇さんが私の嬉しくなることばかり、さらりと言うから……」

 布団の中でぎゅっと抱きしめられたと思ったら、今度は覆い被さる体制になり、ちゅっと触れるだけのキスを落とされた。
 キスの間、閉じていた目を開ける。
 珍しい。義勇さんが笑っている。

「ど、どうして笑ってるんですか?」
「いや。可愛いなと思って」

 今度は義勇さんの指が私の髪を掬う。

「……早く俺だけのものにしたい」
「もうとっくのとうに私は義勇さんのものですよ」

 そう言って首に手を回せば、二人の長い夜が始まるのだった。


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