※死ネタ









それは突然だったんだ


いつも人で賑わう池袋。人間が好きな臨也にとってみれば、もってこいな場所であった。
今日もとて賑わう池袋を徘徊していた。もちろん、暇であったからではなく仕事があったのでそのついでに寄ってみただけなのだ。

周りを見渡せばサラリーマンやガラの悪い学生がいたり、サイモンがチラシを配っていたり、いつも変わらない池袋だ。


……いや、違う。
いつもの池袋じゃない
何かが足りない。なんだ、なんだろう。






ああ、そうか。
あの人が――…平和島、静雄が見当たらないのか

いつもなら自分がちょっと池袋を歩いているだけで自販機やら標識がとんでくるのに今日はそれが無い

臨也にしてみればラッキーなことのはずなのに、何故かつまらなかった。物足りないな、と思っていた






「……帰ろ」





臨也は駅を目指し人混みの中を歩き始めた

こんな好都合なことこれ以上無いのに、何故自分は駅に向かって歩いているのか、何故静雄がいないとつまらないとか物足りないとか思ってしまったのか、よく分からないまま歩いていた


するとコートのポケットの中にある携帯がブーと震え始めた。臨也は携帯を取り出して、耳にあてた






「はいはーい、素敵で無敵な情報屋ですよー」







いつも通りの軽い口調で電話を出た。




「――…や、臨也かい?」





どうせ依頼だろう、と思っていたので電話の相手に多少ながら驚いた
電話の相手は高校の同級生であった岸谷新羅だった






「新羅か、どうしたの?電話なんかしちゃってさ」

「いいかい、臨也…落ち着いて聴いてよ?!」

「……何?早く言ってくんない?こっちも忙しいんだよね」







電話越しの相手は酷く動揺していた。あまりにも彼らしく無いと思った臨也は眉間に皺を寄せた


こんなにも動揺している彼を見たことはあっただろうか。―――…あぁ、そういえば高校の時、新羅の同居人が口を聴いてくれない、と焦っていたけな




なんて昔の思い出を思い返していたので新羅が言った言葉を思わず聞き流しそうになってしまった











「――…静雄が、死んだ」











それからはよく覚えていない。気がついたら新羅がいる部屋の前にいて、インターホンを押していて、息は乱れて横っ腹が凄く痛い。足は生まれたての小鹿のように震えている気がして、右手にはディスク画面が真っ黒になっている携帯を握っていた


どうやら自分は無意識のうちに一心不乱になって走っていたらしい。そんな冷静に状況を把握する自分がいた



目の前のドアが開いた。そこには新羅の同居人――…セルティがいた。彼女はPADを取り出して、素早く文字を打ち込み臨也に見せた







『はh早く、ああああがってっkれrrr』






彼女も動揺しているのかPADの画面に打ち込まれた文章は読みにくく、まるで生まれて初めてパソコンを使った人みたいだった


臨也はセルティに言われるがままに、部屋に入っていく。リビングに入ると新羅とドタチンがいた。2人とも真剣な顔をしていた


そして、そんな2人の目の前にいるのは





「……新羅、ドタチン………シズ、ちゃん?」






横になって眠っている静雄がいた。服装はいつものバーテン服ではなくて白い着物で、手は胸のちょっと下ら辺で組まれていた



訳がわからなかった
どうしてシズちゃんは寝ているんだ、どうして白い着物を着ている?
どうして新羅もドタチンも運び屋もそんなに悲しげな表情をしている?


ちょっとやめてよ
それじゃ、まるで…






シズちゃんが本当に死んじゃったみたいじゃんか










「…シズちゃん、何寝てるのさ。早く起きなよ」





こんなつまらない悪戯はやめてさ、また鬼ごっこしようよ。ほら、いつもみたいにすごい険相で俺の名前を呼んでよ。有り得ない馬鹿力で自販機や標識を投げてきてよ


ねぇ、寝てないでさ









未だに寝ている静雄の頬に手を伸ばして触ろうとした。そうすれば起きて自分を追いかけて来るだろうと思って。まだ温かいと思われる頬を触った…だけど






「…つめたっ」





まるで氷を触ったかのように彼の頬は酷く冷たかった。そこで、ようやく頭が理解した




彼、平和島静雄は死んだのだ…と








「嘘、だろ?ねぇ、嘘でしょシズちゃん。死んだなんて、嫌だよ認めない。例え病気であっても俺以外の奴に殺されないでよ、君を殺すのは俺なんだからさ…。てか化け物がそう簡単に死ぬなんて笑えないんだけど。ねぇ、シズちゃん…目を、開けなよ」







どんなに声をかけたって、馬鹿にしたって彼は目を開けない。ただ名前の通りに静かに眠っていた


ポタリと静雄の頬に水滴が落ちた。臨也の赤い瞳からは涙が流れていた
拭うこともせず、臨也はただ静雄の顔を見て涙を流した









俺はとんだ馬鹿野郎だった

大嫌いなシズちゃんがいないと、つまんないとか物足りないとか思っていたのも、今こうして涙を流しているのも…すべては、君のことが――…好きなんだ。愛していたんだ




こんな大事なこと、無くしたあとに気がつくなんて本当に俺は












大馬鹿野郎


(ごめんねシズちゃん)
(愛してる)













――――
ドシリアス、かな!
シズちゃんの死亡原因はなんだろう。病気かな←

相手が死んで初めて自分の気持ちに気づく臨也。を書きたかっただけです

お粗末様でした



20120301


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