※臨→(←)静
出来ることなら気が付きたくなかった。死ぬまでこの気持ちに気が付きたくなかった。だって、有り得ないでしょ?絶対に有り得ないって。
何がどうなってこんな感情を抱いたのか、その経路すらも自分自身分からない。分かるのは「好き。愛してる」と言う感情のみ
俺は全ての人間が大好きだ。愛してる。それには変わりない。だけど、それ以上に大好きで愛してしまった人物がいる。
何度も頭を抱えて考え直した。きっと、いや絶対に何かの間違いだ。その人物にこの感情を抱くなんて天地をひっくり返しても有り得ないことなのだから…
でも何度考え直しても辿り着く答えは全て同じだった。
情報屋ことこの折原臨也が好きになってしまった人物は犬猿の中であり、しかも男で俺の大好きな人間ではない化物…平和島静雄である…。
「…はぁ」
臨也は今仕事のために訪れた地、池袋。相変わらずの人混みの中に紛れてポケットに手を突っ込みながら小さく溜め息をついて歩いていた
自分自身の気持ちに気付いて約一週間くらい。「平和島静雄が好き」と言うことに気付いてから、ちょくちょくと静雄をからかいに来ていた池袋になるべく近づきたくなかった。だが、なんというイタズラなのか運悪く池袋での仕事の依頼が入ってしまった
こんな時に…なんて依頼者を恨みつつも、とっとと仕事を終わらせて自分の根拠である新宿に帰ろう。と思い早歩きで歩いていた
早く、早く帰らないと…。冷たい風を顔に受けながら人混みの中をかき分けて歩いていた。が、急に自分の周囲に影が出来た。しかも四角い影が。
臨也は顔を引きつらせて「マジ?」と小さく呟いて身軽にその場から離れると、自分のいたところには何故か自販機が空からガシャァァンとすごい音を出して落ちて来た。
こんな常識はずれなことをやってくる人物は世界で一人しかいないだろう。臨也が今もっとも会いたくない人物…
「いーざーやーくぅーん…池袋にはくんなっつたよなぁ?あぁ?」
「…シズちゃん…」
うしろを振り向いてみれば、案の定と言ってもいいほど毎日バーテン服を身に纏い、金髪でサングラスをかけている彼…平和島静雄がこめかみに青筋を浮かべてそこに立っていた
臨也は平然を取り繕うと思って表情を作るが…我ながらも顔が引きつっているのが良く分かる。
彼の野生並な嗅覚をなめていた…。彼は自分が池袋に来ると必ずと言ってもいいほど見つけ出してくる。…あ、これ別に自惚れとかそんなんじゃ無いから。実際のお話だからね。……まぁ、そのたびに自販機やらゴミ箱やら標識を投げつけてくるのだ
まったく会いたくないって言うのに…シズちゃんはさぁー…困ったもんだよねー…。
心の中で深く長い溜め息をついた。そりゃあ溜め息の一つや二つもつきたくなるだろう。…とりあえず、一刻も早くこの場から逃げようと思った臨也は賢い頭で早速頭の中で策をあれやこれやと巡らせた
そうこう考えているうちにも目の前にいる静雄はそばにあった標識をまるで雑草を引っこ抜くかのように、コンクリートで固められた地面から片手で引っこ抜いた。標識の支柱がメキメキと悲鳴を上げていたがいつものことなので大して気にしなかった
静雄のそれを見ていた周囲の人々は顔を面白いくらいに青ざめて、自分に被害が及ばないようにその場から避難していた。
「あーあーあー…相変わらずの馬鹿力だよねシズちゃん。流石化け物だよ」
「うっせぇ!とっとと死ね!」
槍投げをするかのように標識を臨也に向けて勢い良く投げつけた。だが、伊達に長年静雄と喧嘩と言う名の殺し合いをやってきたこともあり臨也は標識をヒョイと軽々とよけた
臨也がよけたことによって静雄は更にイラつき、大きく舌打ちをしてキョロキョロと辺りを見回し、次に投げるモノを探し始めた。
これはチャンス!と思った臨也は、「じゃ〜ね〜」と手を軽く振って静雄に背を向けて走りだした
「あ、てめ…待てやゴラ!」
逃がさん!とばかりに静雄も臨也を追いかけるべく走りだした。
臨也はいつもの調子で軽く挑発し、路地裏に入って上手く逃げ切ろうと思ったのだが、計算外なことに入った路地裏は行き止まりだった。「ヤバッ」と思い、立ち止まり他に逃げる道は無いか見回そうと思えば、誰かに襟元をつかまれそのまま壁に叩きつかれた
背中を叩きつかれた衝撃で臨也は小さく「…うっ、」と呻き声を零した。そして、そのままズルズルと崩れ落ちていくが完全に座る前に今度は胸倉を引っ張られた
「やぁぁあっと捕まえたぞ、臨也ぁああ…!」
「はは、怖い怖い」
肩をすくめてやれやれと息を吐いて少し大袈裟にリアクションをとる
それを見て静雄は更に青筋をピクリと立てた。胸倉を掴む力がググッと強くなったのが伝わり「あーあー伸びちゃうよ」なんて冷静なことを思っていた
さて、どうしたもんか
言ってしまえば実に自分らしくないと思う。先ほどの行き止まりにあたっても普段なら素早く頭が回転してシズちゃんから逃げ切れた、と言うのに…
今日は頭が回らなかった。自分の気持ちに気付いて戸惑っているって言うのに、その原因でもある本人が来たもんだから…かなり焦った。…んーまぁ池袋にシズちゃんがいるのは当たり前だから見つかるのも仕方無いんだけどね
…と言うより、何故自分だけこんなに考えなきゃいけないんだろう。自分一人で悶々と考えて、いつも通りに行動出来ないなら…いっそのこと自分の気持ちを伝えてしまえばいいんじゃないだろうか
シズちゃんに伝えて、嫌われて (この場合はフラれてかな…?) しまった方がいいんじゃないだろうか。きっとシズちゃんなら「キメェ」と一刀両断してくれるだろう。そうしたら、自分の気持ちもスッキリするだろうし、その後に誤魔化せば収集はつくよな。そしていつも通りの殺し合いが出来るかもしれないし
あぁ、それでいこう
なんかフラれるのは癪だけど…まぁ、そこは考慮しようと思う
そうでもしないと駄目な気がするしね、
意を決した臨也は小さく息を吸い込み、静雄に語りかけた
「ねぇ、シズちゃん。ちょっといいかな?」
「あぁ?遺言か?」
「遺言はなーまだ死にたくないしー…まぁ、いいや。ちゃんと聞いてよ?これから言うことは全部本当だからね。嘘じゃないからね。分かった?」
「?…おう。」
いつもみたいなヘラヘラとした顔ではなく、真剣な顔をしていたもんだから静雄も臨也の話を聞く体勢にはいった
そして――…
「好き。シズちゃんのことが大好き」
「……は…?」
「愛してる」
さぁ、いつでも断りの返事よ来い!あ、でも殴られるのは痛いから目は瞑っておこう
そう思いギュッと目を瞑り覚悟を決めた
…だが、いつになっても言葉も拳も降ってこないので、臨也はそっと目を開けた。そして驚きの光景を目の当たりにした
その光景とは、静雄の顔がこれでもかってくらいに赤く染まっていた。
臨也もこれには想定外で思わずキョトンとした顔をして小さく呟いた
「…赤っ…」
「……〜〜っ!」
静雄は臨也の胸倉を掴んでいた手をいきなり離した。それにより臨也はカッコ悪くも尻餅をつき、「いだっ」と小さな悲鳴をあげた
うった尻を軽くさすりながら静雄を見上げれば、まだ顔は赤く手の甲で口元を抑えていた
それを見て、かーわいー…なんて思っている臨也はもう末期なんだろう
「そ、ん…なこと信じるわけ、ねぇーだろ!ば、バーカ!」
そう捨て台詞を言い残し、静雄はその場から走り去ってしまった。
一人残された臨也は少しポカンとしてから、口元を手で覆った。
その頬には赤く染まっていた
(…あーもうちくしょ…あんな反応されちゃあ…可愛いじゃんか…。)
(あと…これって…あれだよね…。
期待しちゃって…いいんだよね)
気がついたら顔はいつものにやけ顔に戻っており、悶々していた気持ちはスッキリとしていた
臨也はググッと背伸びをしてから立ち上がり服についた埃や砂を払い、スキップか鼻歌を歌う勢いで上機嫌で新宿に帰っていった
それからと言うものの臨也は静雄に対する態度がガラリと変わったとか
君に届け!
(シズちゃんラブ!好きだ、愛してる!)
(うっせぇえ!つか、ハァハァ言いながら来んな!キモイ!)
(照れなくていいのに〜かーわいー)
(っうぜェェェ!)
――――
お初の臨静でした!
なんかよく分かんないけど、臨也は片思いだと思っていたが実はシズちゃんも臨也を気にしててー…みたいな感じです←
無駄に長いェ…
私の中の臨也は変態イメージが強いです。赤面シズちゃんハァハァ…
お粗末さまでした!
20120128
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