「ほらー、梵天丸ー待て待てー」

「きゃあー」






青い空の下、豊臣の城の中にある庭園で家康と梵天丸がきゃいきゃいと楽しく追いかけっこをしていた。その微笑ましい光景を背景に三成は自室で机に向かい政務をしていたが、楽しそうな声で集中出来ずにいた。

持っていた筆をコトと机に置き、小さく溜め息をついた。





あの時、家康が考えていたことは、梵天丸を豊臣の城に置く。と言うことだった。勿論、三成は「そうか」と言って納得する筈もなくカンカンに怒り、秀吉様にご迷惑をおかけするであろぉおお!と言って刀を振り回して家康を追いかけたくらい怒った。



だが、途中で梵天丸が泣き出してしまい、追いかけっこを止めた。泣いている梵天丸をあやしながら家康は、少し怒りが静まった三成に「聞くだけ聞いてみよう、な?」と言うと、三成は少し黙り込み舌打ちを一つして「分かった」と言って承諾した


三成だって、感情はあるわけで、梵天丸を一目見て可愛いと思った事は事実。そんな可愛い梵天丸がこんな戦場の地に置いていくのも…と心の隅で思った事と、自分が追いかけた事によって梵天丸を泣かせてしまった罪悪感でつい承諾してしまった。




秀吉様…まだ未熟な私をお許しを…!と心の中で謝る三成は梵天丸に溺愛している家康と共に豊臣軍の本陣へ帰って行く。
そして2人は梵天丸を連れ、半兵衛と秀吉の元に行き、梵天丸のことについて話すと出て来た返事は「構わん」と言う許可だった。

あっさりと許可をもらったことで、2人はポカンとしていたが家康が気を取り戻し、「良かったな!梵天丸!」と言って大喜びしていた記憶は新しい。



そんな感じで、梵天丸は家康たちと一緒に暮らす事になったのだ。
別に一緒に暮らすのはいいのだが、政務中にこう騒がれてしまっては集中出来ない。三成は我慢の限界が来たのか障子をスパーン!と勢い良く開け、家康に向かって怒鳴り散らした







「家康ぅうう!もう少し静かにしろ!政務に集中出来ないだろうが!」

「三成!一緒に追いかけっこをしよう!」

「今、私は、なんと、言ったぁ!?私は政務中だ!遊ぶ暇など無い!」

「つれないなぁー。寂しいな梵天丸。」

「いっしょに、遊ばないの…?」

「ぐっ…、せ、政務中だ!」






潤んだ目で、そう訴えてくる梵天丸に心が揺らいだが、素直になれない三成は政務中と言って顔を背けた。
その時、梵天丸が一瞬だけ顔をクシャリて歪めたことを家康も三成も知らない。


ぶーぶーと言う家康にイラッと来た三成は斬滅してやる…と思い、刀を持って来ようとした時、家康が「そろそろ鍛錬の時間だな」と言って、立ち上がり服についた砂を払い、梵天丸に「すぐ戻って来るから、三成と一緒にいるんだぞ?」と言えば、コクリと頷いた。

それを見て、笑顔でよし!と言って頭をワシャワシャと撫でた。





「それじゃ、三成。梵天丸を頼んだぞ!」

「……あぁ」




そう返事をすれば、家康は鍛錬しにこの場から離れて行った










君と2人きり


(私は、)
(どうすればいいんだ?)







――――――
家康、梵天丸に溺愛のご様子。まぁ、梵天丸様は天使だから気持ちは分かるぞ!



20110725

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