先ほどまで銃声や雄叫び、人の悲鳴などで辺りはうるさかったのに今はしん…と静まり返っていた。地面には地に突き刺さったままの刀や先が折れた矢。そして、血が辺りに染まっており、人の死体がバラ、バラと転がっていた。


つん…と鼻に突き刺さるような匂いに思わず、手の甲で鼻を抑える。いくら戦に出ていても…どうにもこの匂いはなれない。と思いながら顔を険しくしている青年…徳川家康は参加していた戦に勝利の雄叫びが聞こえたので豊臣軍へ帰る途中だった。



彼…家康はいつもは明るく笑顔を絶やさない太陽のような男だが、戦が終わる度、一人になっては頭巾をそっと被り、見かける死体一体一体に手を合わせて無事成仏出来るよう祈ることと、すまない…と心の中で何度も謝っていた。




はて、一体何度謝ったのだろうか。一体何人…何千人もの人の屍を見ただろうか。一体この拳で何人の人を殴って来たのだろうか。一体いつになればこんな悲しき時代が終わるのだろうか…。


いくら考えても答えが見つけ出せない。謝ったことも見たことも殴ったことも……頭がこんがらがって何も分からない。
自分の不甲斐なさに笑ってしまえる。はは、と笑おうとしたが、しばらく声を出していなかったから、ヒュッと喉から空気が抜けただけだった

それすら情けなく感じて、他人の血で少し汚れてしまった自分の手を見ては下唇をグッと噛み、強く拳を握ったまま、ただ立ち尽くしていた。








……さて、そろそろ戻らなければ…また、三成に怒られてしまう。今度怒らせてしまえば、大変な事になりそうだ



そう思い、止まっていた足を再び動かし始めた。じゃりじゃりと石を踏み歩き続けると後ろの方からガサッと草むらが動いた

家康はバッと振り返り、戦闘体勢に入った。もしかしたら敵の生き残りかもしれない。また、一人………その後は頭を振り考えるのを止めた。そして、ガサガサと動く草むらをじっと見つめると遂に草むらから人影が現れた



グッと拳を握って構えていたが、草むらから出て来て人影を見て構えるのを止めた




そこにいたのは右目を包帯で隠している、小さな可愛らしい男の子だった。






戦場での出会い

(小さな少年は)
(酷く怯えていた)





20110721

prev/back/next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -