どこか、分からないところ。左しかない目で辺りを見回す。周りは見たこともない…否、四方八方真っ白なところだった。

俺はボーっと突っ立ってた。すると、後ろから声が聞こえた。振り返ってみたら、今まで何も無かったのに、一個の机と二個の椅子が現れた。一つの椅子には誰か座っている


その誰かが、手招きをするもんだから、なんも警戒をせず、俺は近寄って行った





「――…やぁ。」





その誰かは見た目的に青年だった。目の前にいる青年は、手をヒラリと小さく振った。顔は頭巾を被っているから暗くて見えないが口元は見える。彼の口は弧を描くように笑っていた


俺は彼をジッと見ていたが、座ってくれと言われたので少し椅子を引き、彼と対面する形で座った






「…さて、いきなりですが貴方は次、何になりたいですか?」






本当にいきなりのことだから、俺は「Ha?」と間抜けな声を出して、聞き返した。彼はクスクスと笑って、一枚の紙を取り出した。






「…貴方は以前、鳥になりたいと申し上げてましたが、どうでしょうか?鳥になってみますか?」








嗚呼、なる程。ここはあの世なのだろう。神とやらが死んだ人たちに第2の人生をpresentするってことか。俺は寿命を迎え、ここに来た。
目の前にいる青年は神なのだろう。きっと、自分に第2の人生を授けてくれるのだろう



だから、彼は尋ねたのだ。以前口癖になりかけていた言葉…自由にあの大空を優雅に飛ぶ、鳥のようになりたい。と言うのを知っていたから尋ねたのだろう

もちろん、俺は鳥になりてぇと思った。今でも思うことがある。………でも、違う

おれは…俺は…










「…いいえ。俺はまたニンゲンになりたいです」

「ほう、そうですか。変えることは出来ませんが、いいのですか?」

「はい。俺はまたニンゲンになって、会いたい人がいるんです。また会おうと約束をしたんです

その人は忘れてるかもしれない。けど…それでも、その人に会えるまでは」








ニンゲンのままでいたいんです



そう、自分の揺るがぬ意志を伝えると青年は驚いた顔をした。だって、口が笑っておらず、かわりにポカンとした口をしていた



だけれど、その表情は一瞬で気付いたら青年は先ほど変わらず、ニッコリと笑っていた






「分かりました。それでは、その人に会うまではニンゲンのままでいいんですね?」






俺はコクリと頭を縦に振った。青年は、なるほどと言って何やら、紙に書き始めた。
きっと俺が言った言葉をメモしているのだろう







「あぁ、容姿はどうしますか?変えることは可能ですよ…?」

「……いえ、出来たらこのままの容姿がいいです」

「…そうですか。分かりました

そうだ、最後に涙は付けますか?みなさん、面倒だからって付けないのですが…」

「是非ともお願いします。もし、あの人が泣けなかった時に代わりに泣いてやりたいんです」






そう言えば、青年はニッコリ笑って、分かりました。と言って紙に字を書き始めた





何故だろう。
彼とは初めて会ったはずなのに
初めて声を聞いたはずなのに

どうして、こんなにも目の前の彼が






懐かしく思うのだろうか…










「では、望み通り全てが叶えられました。これから新しい人生をスタートし、待ち人と会えることを願います」

「…………。」






何もなかった空間から扉が現れ、ギィと扉が開いた。開いたところから光が漏れだし俺は少し目を細めた


あの扉をくぐれば、新しい人生が始まるのだろう。早く行って、あの人に会わなくてはいけないのに、体はピクリとも動かない…



全然動かない自分を見て不思議に思ったのか、青年は問いかけようと自分を見た瞬間、青年は少し驚いていた








「嬉しさのあまりに泣いているのですか?」

「……え、」





言われて気づいた。俺は泣いていた。知らず知らずに左目からポロポロと涙が溢れ出てくる



その瞬間、自分は分かった。そう…泣いてることも、この感じも、全て分かったんだ…








「No。俺が泣く理由はさっき言ったはずだ」

「…?」






ガタッと椅子から立ち上がり、机越しに青年に近付いた。彼は口調が変わったことなのか、自分が一気に近付いたことなのか、どっちなのか分からないが彼は驚いていた


だが、近付いたことにより、頭巾を被っていた彼の顔が見えた








「…あんたが、泣かねーからだろ…」

「……え、」

「あんたはいつもそうだ。自分1人で抱え込んで、周りに心配かけさせたくねーからって、泣きたいのに無理矢理笑いやがって…」

「…何を言ってる、のですか…」








俺は困惑している彼の頬にソッと手を添えた。俺は左目からはまだ溢れ出てくる涙を拭くこともせず、重力に従って下へと落ちていく。







「あんたの居場所はここじゃねえ。こんな、らしくねぇ口調で死者と会話してたら、またアイツに怒られんぞ」

「私は…別に……」

「Say nothing(何も言うな)。黙って俺について来い」






そう言って俺は彼の腕を掴み、早足で扉の方へ向かって行った

彼は慌てて、制止の言葉を述べたので扉に入る、一歩手前で止まった






「私は別にそちらに行かなくとも…」

「Shut up。何をそんなに怖じ気づく?何も恐れることはねぇんだよ。だって、あんたは太平の世を造りあげたんだろ?」

「……私は、」

「Ahーうじうじすんな。男ならもっとシャキッとしやがれってんだ。みんな、あんたを待ってる
…それに、俺との約束をちゃんと…果たせ」

「………ど、く…がん…りゅう…」





過去にアイツが俺を呼ぶときに使った、俺の二つ名を途切れ途切れだが、震えた声で言ってくれた。
だから俺はニコッと笑い返した






「come on。―…"家康"」










―――――
――――
―――
――















「いい加減に起きやがれ!」

「あだっ!」






ぐっすりと眠っていたワシの頭に、何か固いものがガンと当たった。
痛む後頭部を押さえ、机に突っ伏していた顔を上げれば、目の前には片手に国語辞典を持った伊達政宗がいた






「んー…もうちょい、優しく起こしてくれないか?」

「Ha!何回呼びかけても起きねぇお前がワリィ」

「ははは、相変わらず手厳しいなぁ!」





豪快に笑っていると、ガラリと教室の扉が開いた。そちらに視線をやれば、銀髪のすごい前髪をした友…石田三成がいた





「やっと起きたか。とっとと帰るぞ。私を待たせるな」

「…だとよー」

「わわ、待ってくれ!まだ準備してないんだ!」







急いで鞄に筆箱やらノートやら詰め込み、帰る支度をした。気づけば、外はオレンジ色に染まっており、寝ていた自分を待っていてくれた2人に嬉しさを覚えつつ、そそくさと自分を置いて帰って行く2人に苦笑いした


帰る支度をしていた手を止めて、自分に背を向けて歩き始めている政宗を呼び止めた。



そして、ずっと言いたかったことを彼に言ったんだ







自分に本当の居場所を、自分言う自分を教えてくれた彼に
















「政宗、ありがとう」











感謝の言葉を伝えた。



政宗は見向きはせず、背を向けたまま、手をヒラリと振って








「You're welcome」








と言って教室から出て行った。ワシも少し微笑んでから慌てて2人のあとを追うように夕日の色に染まった教室を出た。

















わたしの居場所


(それは、こうして)
(友と笑い合える場所なんだ)







―――――
えっと、神になった家康に政宗さんが本当の居場所を教えると言うか、なんと言うか…
RADのオーダーメイドを聞いて、書き上げたので…本当にすみません。

最後は学パロです。分かりにくくてすみません。

もう、俺得です!
長文お付き合いして下さり、ありがとうございます!








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