恋しき名 (1/4)
朝も、昼も、夜も
貴方の名を呼び続けるわ。
魂が空へ上がっていく瞬間も
私は貴方を呼び続ける。
願わくば、ずっと傍に。
生まれ変わっても、貴方の傍に。
「‥もう!誤解なのに‥!」
何とか訴えるけれど、前を歩く背中は速度を落としてくれないらしい。
「あー、悪い悪い。後でちゃんと誤解といとくって」
「‥‥っ貴方ねぇ!」
後ろを振り返れば能天気な笑い顔に、静かな怒りが込み上げる。
そもそも最近になって漸く打ち解けることの出来きた、この男が原因なのに。
‥‥‥けれども、密かな喜びが胸を占める。
物心付いた頃からずっとずっと、朧気に描き続けた恋しい人が、妬いてくれているのだから。
廻り逢っても、桜子を愛してくれているのだから。
‥‥‥ほら。
桜子の腕を掴む彼の力は、熱い。
遙か昔と変わらない強さで。
夢の中で輝いていた、あの日々と同じ───
恋しき名
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