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片膝を付いたままの九郎は、そのままの姿勢で止まる。
「‥‥大好き」
抱きついてきた義妹兼恋人を支える為に。
「‥‥‥ああ、俺も」
自分よりもずっと華奢な背中に腕を回し、その重みを感じる為に目を瞑った。
翳めるだけの口接けを交わして、ほんの少し身体を離せば、輝く笑顔。
溢れる愛しさに、もう一度唇を寄せた‥‥ものの。
「ね!兄上、金と遊ぼう!!」
「なっ‥‥おい!?」
九郎の腕を解き、逆に片手をぐいぐい引っ張りながら走り出す。
「金!!遊ぼうっ!!」
「‥‥‥全くお前は、俺の気も知らずに‥」
腕を引かれて走る。
視界の中で撥ねる、栗色の髪。
たった一つ、見つけた────ゆきと言う光。
「もう疲れたのか?修行が足りないな!」
「しゅ、修行って‥‥そんなの、してないもん‥‥」
腕の代わりに手を繋ぎ、すぐに疲れた体力のないゆきを今度は引っ張った。
ぜぇぜぇと荒い息を繰り返す彼女の苦情が途切れるまで。
‥‥それはつまり、
姿を現した金が、向こうから走ってきた勢いのまま‥‥‥
「ぎゃあっ!!」
「ゆき!」
再びゆきに飛び掛るまで。
ずっと、手を繋いで
「あのね、金とじゃれる兄上は一見の価値があるって、泰衡さんが昨日教えてくれたの」
「‥‥何を言ってるんだ、あいつは」
「でも兄上、すっごく楽しそうだったよ?本当に犬が好きなんだね!」
‥‥‥きらきらした眼は、まるで仔犬のよう。
「‥‥‥ああ、俺は自分でも驚くほど【犬】に夢中らしい」
「‥‥??」
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