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自室に入る。
褥の上にゆきを座らせ、九郎も正面に胡座を組む。

赤面したままのゆきの両手を取り、ぎゅっと握った。



「お前に誘われた時から考えていたんだ‥‥‥今日、言おうと思っていた事がある」

「‥‥‥なに?」



真摯な声音に、ゆきは顔を上げた。



「ゆき、お前の一生を俺にくれないか」

「‥‥‥‥‥‥それって‥‥‥」

「お前と一生を共に過ごす幸せを、俺は欲しいんだ」



‥‥‥ゆきの眼からは、涙が堰を切ったように溢れ出しす。



「‥‥‥うん。一生側に、いて‥‥‥」



九郎が指先で拭っても、止まらない涙。

仕方ないから代わりに唇を寄せた。


ゆきはくすぐったそうな顔をする。



「お前は本当に泣き虫だな」

「だ、だって、嬉しいんだもん」

「そうか‥‥‥お前が嬉しくて泣くのなら、いい」



涙を拭う九郎の舌は、頬に触れ、額に触れ
‥‥‥ゆきの唇に辿り着いた。


柔らかくて暖かい、ゆきそのものを彷彿とさせる、そんな唇に。



「今夜、俺の‥‥‥つ、妻になってくれ」

「‥‥‥‥‥‥またそこでどもったよ、兄上」



弾ける様に笑い出したゆきに一瞬見惚れて。

九郎はわざと憮然とした表情を装い、押し倒した。



「うわっ」



兎の様にびっくり眼を丸めて九郎を見上げるゆきの背中には、白い褥。



「あまりからかうな。余裕がなくなるだろう」

「よ、余裕って何!?余裕って何!?」






慌てふためくゆきに愛しさが込み上げた。













「好きだ、ゆき。だから‥‥‥俺にお前をくれ」




答えはない。


けれど、同意するように眼を閉じたゆき。

体重を掛けない様に肘で支えながら、唇を奪う。






重なる影と、熱く重ね合う吐息。

それだけが二人の世界の全て。



















迸る情熱が過ぎて、疲れ果てまどろむゆきの頭を撫でながら、九郎はふと思い出す。


『雪が降るクリスマスに永遠を誓うと、それは本物になると言われています。迷信と言えば迷信なんですけど』


何故か真顔で譲が言っていた。
あの後、譲は何と続けていたのだったか‥‥‥。



「‥‥‥ゆき」

「ん‥?」



ゆきはぼんやりと眠そうに眼を擦った。

やっと手に入れたゆきへの愛しさに溢れ、額に唇を落とす。

くすぐったそうに身を捩る彼女の耳に、囁いた。




「今日はほわいとくりすますと言うのだろう?」

「‥‥‥有川くんから聞いたんだ?」

「ああ‥‥」



確か、こんな時は。
何と言えば良かったのか。



「お前と、永遠を共に‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥ゆき?」

「‥‥‥‥‥ぶっ‥‥‥‥あははははは!!」



すっかり眠気が吹き飛んで「おもしろ〜い!」と泣き笑いながら、ばんばん床を叩くゆきと。


まんまと譲に嵌められた、と気付き憮然としながらも
やがて笑い出す九郎と。











永遠に二人は

『いっしょ』









塞がった隙間






 

  
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