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「おはようございますゆきさん。今日は見違えるほど可愛らしいですね」
「あ、弁慶さん、敦盛くんは?」
「おはようございます、ゆきさん。今日は見違えるほど可愛らしいですね」
「いやだから敦も‥『おはようございますゆきさん。今日は見違えるほど可愛らしいですね』‥すみませんおはようございます、今日は頑張ってみました、ありがとうございます」
「‥ふふ、朝から本当に可愛い人ですね」
その笑顔が爽やか過ぎて怖いんです‥‥。
海の暁〜@〜
恋々花
朝から望美と朔に拘束されたゆき。
やっと開放されて居間に入れば弁慶のみ。
お目当ての彼がいないし、弁慶はニコニコしてばかりで質問に答えてくれず‥‥‥。
(弁慶さんに助けられて二年かぁ‥‥‥この人のキラキラにも随分耐性が出来たもんだ)
「僕のキラキラに耐性ついてしまったのは残念ですが敦盛くんは朝早くに出掛けたみたいですよ」
「そうですか‥‥‥ってなんで考えてることわかるの!?読まないで下さい!」
キッと睨みつけると、笑い声が返ってきた。
「君は解りやすいから。九郎と同じですね」
‥‥九郎と同じ‥‥。
ゆきの脳裏に、腹黒軍師に弄ばれる源氏の大将が浮かんだ。
ちょっとショックを受けながら(ごめんなさいね九郎さん)、弁慶に御礼を言って部屋を出る。
「敦盛くん出掛けたんだ‥‥‥折角のおやすみだったのにな」
はぁ〜、と溜め息が出て来る。
いつも寝坊ばかりするゆきが早起き(それでも普通の時間)したのは、紫の髪の青年を拉致‥‥‥‥もとい、市に誘うつもりでいたから。
(仕方ないな、たまには一人でぷらぷらしようかな)
ゆきは京邸の門を出た。
「わぁ綺麗‥‥」
今日は市が立つ日。
立ち並ぶ出店を目当てに沢山の人が行き交う。
色とりどりの反物が並ぶ出店をゆきは物色している。
「あ、この反物可愛い!こっちもいいな」
師匠からお給金貰ったところだし‥仕立ててみようかな。
賑やかな雰囲気に背を押されて反物をじっくり見物してみる。
陰陽師見習いとして安倍家に通うゆき。
普段は飾り気のない装いなので、可愛い着物は持ってない。
今着てるのは、夕べ朔にお願いして借りたもの。
恐る恐る
『可愛い着物を貸して下さい』
とお願いしたら、朔が薔薇色の笑みを浮かべていた。‥‥‥怖かった‥‥‥。
案の定、朔と望美がこの機会を逃すはずもなく、朝から爽やかに叩き起こされ
『いやんゆきってば淡い色似合うのね〜♪』
『え、ちょっ朔っそこまでしなくてもっ!何かキャラ違うしっ!』
『きゃぁぁ!!髪を結っても可愛い〜♪♪バニー着せたぁい♪♪』
『や、の、望美ちゃんっ化粧までしなくてもっ!つかこっちにバニーなんかないから!!』
服を着付けて貰い、髪を何度も結い直され、薄化粧もしてもらったが……散々弄ばれた気がする。
そして、彼女達の格闘の成果が今のゆきの姿なのだけど。
なのに見せたい人がいないのは寂しいもの。
(敦盛くんに見せたくて朝から頑張ったのにな‥‥‥こんな事なら恥ずかしがらずに昨日のうちに誘っとけば良かった)
後悔先に立たず。
仕方ない、と何度目かの溜め息をついて気分を切り替えた。
こうなりゃ次回の『ギャップ萌えを狙って敦盛を落とそう大作戦』(ゆき命名)
の為に、悩殺反物をじっくり探す。
「やっぱりこれが可愛いや!‥‥すみません、これを仕立て下さい」
元宮ゆき、初めて着物を仕立て貰います!!
待ってろよ敦盛くん!
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