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‥‥‥約束する。



どんなに時を経ても、




必ずゆきの元に還る













信じているよ、いつか会えると











海の暁〜後日談〜
『永遠恋歌』











夢を見た次の日は、泣きそうになる。


そんな朝も、二年が過ぎた今は随分と少なくなった。









「ゆき、起きなさ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「いや、朔、固まりすぎだから」


部屋の戸口で固まる、姉とも親友とも思う朔。
私はクスクス笑った。


「ごめんなさい。あなたが早起きするなんて」

「明日は雨かもね!!」

「本当にそうかもね。兄上に言って敷布の洗濯もお願いしておこうかしら」

「‥‥‥冗談なのに」



今度は朔が笑う。
私が頬を膨らませると、なおもクスクスと。

大人しそうに見えて、朔ってば昔から辛辣だもんね。



「着替えたら手伝うね」

「‥‥‥やっぱり明日は雨かしらね」

「あ、ひっどい!早起きした時は手伝うよ、ちゃんと!」

「分かっているわ。冗談よ」




笑いながら部屋を出ようとして、朔が立ち止まる。




「ゆき‥‥‥」






うん。
何を言いたいのか分かっているよ。






「大丈夫」

「そう。それなら良かったわ」



今度こそ部屋を出て行った。










大丈夫だよ、朔。



最初は辛かったけどね。

今では夢で会える事が、何より嬉しいから。




「しっかし今日のパターンは初めてだなあ」



う〜んと伸びをして、爪先立ちになる。
そのまま張り切って、うろ覚えのラジオ体操なんかをやってみた。



「‥‥‥って、深呼吸しか覚えてないし!!」



まあ、当然だよね。
こっちに来てからもう四年になるもん。


ラジオ体操は諦めて、代わりに髪を梳かそうと鏡と櫛を引っ張り寄せた。

伸ばしたままの髪はお尻の位置を超えて、梳かすのも一苦労。






これは、願掛け。

おまじない、って言えばいいのかな。





櫛を髪に差し込もうとして、私はふと止まった。













もしも、もしも。

今朝見た夢が本当なら‥‥‥。







鏡に映る私の姿をじっと見る。



あの日から、二年。




『綺麗だ』とか

『貴女を妻に‥‥‥』とか


そんな事を言われる事が増えた気がするけど、正直なとこ興味がない。


そこは景時さん達も分かってくれているらしく、縁談の話を一応持っては来るけど‥‥‥。

私の顔を見て、諦めてくれる。









正月を過ぎて皆一斉に年を取って。
いつの間にか、二十歳になった。




「‥‥‥行かず後家はさすがに嫌だなあ」





鏡の中の私、少し泣きそうに見える。



「‥‥‥って、そうじゃなくて!!」




すっく、と立ち上がる。
ダッシュで着替えて、簡単に髪を撫で付けた。

部屋を飛び出す。







ほら、鉄は熱い内に打てって言うよね?


‥‥‥誰が言ったっけ?
鉄だから‥‥‥鍛冶屋さん?


まぁ、誰でもいいか。






 

 
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