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これが


あなたの  選んだ答えなの










海の暁〜終〜
『約束』










 




「‥‥‥さん‥‥‥‥‥‥‥‥‥あつ‥‥さん!」



     声が聞こえる。




「‥‥‥!眼を覚ませ!」




     声?



「チッ!やるしかねぇのかよ!」

「兄さん迷っている暇なんかない!」




      時間?
      何かが、浮かんで来そうなのに



「‥‥‥オレ達で弱らせるから、後は頼むぜ、望美」

「私もやるよ!ヒノエくん達と一緒に戦う!」










      夢中で片腕を振り上げ、自分に近付くモノを凪ぎ払う

      数が多いソレらは、払っても払っても向かってくる




      煩くて仕方ない





「くそっ!  !!目を覚ませっ!!」

「九郎、今の  には何も届かないよ」

「だが、景時っ‥‥‥!」





      煩い






「仕方ない、神子。技を出すしかない」





      神子?






「待って下さい先生!」



      走って来るモノは「少女」




「‥‥‥‥‥‥  さん!

敦盛さんっ!!」





      敦盛?


      馴染む言葉







「敦盛さん!!ゆきちゃんをっ‥‥‥!!」











‥‥‥‥‥‥ゆき












「あ‥‥‥」









振り回していたのは片腕だけ。

もう片方の腕を、見た。











「‥‥‥‥‥‥っ!!」











目が、醒めた。












何度となく眼にした本性剥き出しの自分の腕。





醜く変化した己の腕に抱えていたのは、



力なく眼を閉じた少女だった。








「敦盛さん、今戻してあげるから‥‥‥」






清らかな少女が、腕に触れた。



しゃん‥‥‥と澄んだ鈴の音が聞こえる。


瞬間、眩く白い光が視界を覆った。








身体を構成する全てのものが、形を変えるような、感覚。









「‥‥‥っ‥‥ゆき‥‥‥」






二度と傷付けないと、誓ったのに

この手にかけてしまった


最愛の存在









薄れゆく意識。
血の気が失われたゆきを、誰かが抱き留めるその腕が、敦盛の最後に見た光景だった。
















「‥‥‥弁慶さん、ゆきちゃんは?」

「息は吹き返しましたが‥‥‥危険です。すぐに暖めないと」

「‥‥‥ならば私が邸に連れて行こう」



リズヴァーンが弁慶の腕からゆきを抱き取る。

瞬く間も無くその姿は掻き消えた。



「俺達も戻りましょう。元宮も心配だし‥‥‥」

「敦盛も放って置けないしね」




譲の言葉をヒノエが継ぐ。

元の姿に戻った敦盛。
気を失いその場に崩れ落ちた彼を、将臣が背負う。



足早に邸へ戻りながら、誰一人として口を開かなかった。

何を言えばいいかすら分からない。













敦盛が急に怨霊化した事。
それは恐らく、時期が来たと言う事だろう。

白龍の神こと八葉が怨霊を封印することで正された、龍脈の乱れ。

他の怨霊の殆どは、とうに龍脈に還っていった。
この世に存在する、人の意識を保つ怨霊は、敦盛を含め数人しか残っていない。





龍脈が正常になって時が流れた。







‥‥‥‥‥‥タイムリミット。


将臣の脳裏に浮かぶ言葉。


容赦ない現実が訪れる予兆。










敦盛に掌にはまだ宝玉がついたまま。


そのことに安堵するが、

きっと、もう‥‥‥。



 
 



 
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