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二人の朝は熱い抱擁から始まる。
海の暁〜A〜
『咲恋見夢』
「敦盛くんおはよう!」
「ああ‥おはよう、ゆき」
駆け寄って飛び付く私を受け止める、優しい腕。
一瞬、強く抱き合って。
少し力を緩めてお互いの顔を見る。
優しく微笑んでくれるこの瞬間、私の鼓動は限界まで跳ね上がる。
想いを告げて、
想いが重なって、
互いの存在を抱き締め合って、
‥‥一週間になる。
私は今、幸福の絶頂にいる。
「敦盛くん、良く眠れた?」
「‥ああ、‥ゆきが夢に‥出て来たから‥」
「そうなの?楽しい夢ならい「お前らいい加減にしやがれぇぇぇ!!」
きゃぁぁっ!!」
べりっ!!
「将臣殿‥‥‥」
そして今日も一日が始まる。
「将臣の怒鳴り声がしたが、お前らまたか?」
「またです」
朝ご飯を食べようと皆のいる部屋へ(手を繋いで)入ると、九郎が二人を見てこう言った。
顔が呆れてる。
ゆきが一言で返すと、益々渋面になった。
「お前達は毎朝よく飽きないな‥」
はぁ〜、と溜め息をつく九郎に、まあまあ、と弁慶が宥め始める。
「今が蜜月ですよ」
「なっ‥‥蜜月っ‥‥」
顔が真っ赤な九郎を見て、ゆきは首を傾げた。
「敦盛くん‥蜜月ってなに?」
「っ‥‥!!」
座りながら隣の敦盛を見ると、彼も真っ赤になっていて。
「‥‥?」
「姫君の世界で‘らぶらぶ’って事だよ」
いつの間にか背後から肩を抱き締められていた。
「わっヒノエくんっ!?」
「おはようゆき。今日も可愛いね」
「おはようヒノエくん。てゆうか離してよ」
「あはは、照れてる姫君も可愛い 「ヒノエ!(ガタッ)」 ―うわぁっ!冗談!!冗談だから!敦盛!!」
敦盛が立ち上がろうとすると、慌てて離れるヒノエ。
前回の恐怖を思い出したらしい。
触らぬゆきに敦盛の祟りなし。
ヒノエの、尋常なまでの慌て振りに、傍観中の弁慶が首を傾げた。
「どうしたんですか、ヒノエ?いつもならこれ位で引き返さないでしょう?」
「何でもねぇよ」
「敦盛くん?」
「‥何でも、ありません‥弁慶殿」
何だろう、この微妙な緊張感は‥‥。
気 に な る。
近い内に解明しようと決意する弁慶だった。
「あ、おはよう、譲くん」
「あ、おはようございます、先輩。‥‥‥あれ、兄さんは?」
「さっき中庭に行ったけど‥‥ゆき達、見なかった?」
「将臣くんならさっき私達の邪魔しに来たよ、朔。全く、人の恋路を邪魔するなっての」
「あれほど腹が減ったと大騒ぎしてたのに、姿を見せないとは‥‥‥おかしいですね‥‥敦盛くん?」
「あ、ああ‥‥‥‥‥そうですね、弁慶殿‥‥‥」
「オレ捜してこようか〜?」
「景時、捜さずともいい‥先に食べよう、九郎」
「はい!!」
「譲〜、将臣の気がすごく弱くなってるよ」
「えっ!?白龍マジ?」
「「「いただきます」」」
「兄さんは放置かよ‥‥まあいいや、俺もいただきます」
哀れ将臣!!
「しかし本当にどこに行ったんでしょうね将臣くんは‥‥‥敦盛くん、心当たりありませんか?」
「さあ‥‥‥特にありません‥‥」
「そうですか‥」
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