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景時さんに丁寧に礼を言って、私は部屋を出た。





頭は軽くて、清々しい。

でも、失った重みが少し切なかった。





廊下を歩くと、見慣れた大きな肩。
後ろ姿の彼に足音を忍ばせて近寄ると‥‥‥膝をカックンと‥‥ガックンと?蹴った。



「うわっ何しやがる‥‥‥って、お前!?」

「よっ!!久し振り、将臣くん!!」






将臣くんは、平家の総領として最近は忙しいらしく、ここに来るのは久し振りだった。



「よっ!じゃねぇ!お前、髪‥‥‥」

「似合う?」

「似合うとかそんな問題じゃねぇだろ」



将臣くんは私の髪を見て、渋い表情をした。

こうした表情を見ていると、兄弟って似ているのかな。
なんて思う。




「‥‥‥切って良かったのかよ」

「うん。もういいの」





私は笑う。
すると将臣くんが一瞬眼を伏せて、開いた。









「だったら俺の所に来るか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は?」

「あのな、間をとり過ぎ!それに、何だよ「は?」って!」






いや、むしろ。
私の方が色々言いたいです。







「なんだそら」

「なんだそらでもねぇ!!俺の所に来いって言ってんだよ!」

「‥‥‥何そのツンデレな発言は」

「‥‥‥お前、なぁ‥‥‥」


将臣くんは疲れたようだ。

HPも100の内99減っている様な顔。
‥‥って残り1だね、ご愁傷様。






「将臣くん、悪いけど私 「姫君はオレのモノになるんだよな?」」




将臣くんにちゃんと話そうとした私の肩は、背後から捕らえられる。



いつの間にか後ろにいたヒノエくんに、抱き付かれた態勢。




「残念だったな、将臣。ゆきはオレと熊野に帰るんだぜ?」

「んな訳ねぇだろうが。ゆきから離れろ」

「‥‥‥いや、将臣くんも手‥‥」




対抗なんだか、からかってるんだか。
将臣くんが私の手を引っ張る。





「ほら、離しなよ。ゆきがいやがってるぜ?」

「お前こそ、俺のゆきから離れろ」

「へぇ?いつからお前のモノになった訳?姫君の眼に映っているのは、オレしかいないじゃん」



溜め息が出た。


背後にはヒノエくん。
正面で手を握るのは将臣くん。

イケメン好きな私には美味しい状況。




でも、いい加減にして。



「‥‥‥もう!!私の好きなのはね」




そう言いかけた時だった。







「ゆき」









髪に施す、呪いと言う名の願掛け。
叶った暁には切らなくちゃいけない。












「‥‥‥私のゆきから、離れろ」














だから、切ったの。


















「‥‥‥はっ!?」

「‥‥‥‥‥‥嘘だろ、おい‥‥‥」







物凄く間抜け面だよ、二人共。
力の抜けた手を、咄嗟に払った。







「‥‥‥‥‥‥ゆき」









夢のまんま。
再現している。








髪を切りたての私と、

髪を降ろしたあなたが、



ここでもう一度出会うの。











夢の通りに髪を切って、良かった。





そして、この続きは‥‥‥‥‥‥確か。







私の足は既に、地を蹴っていた。









「敦盛くんっ!!」









そして、それから。







「‥‥‥ゆき‥‥‥」

「あ、敦盛くん‥‥‥」




夢の様に笑えなくて、


ぼろぼろと涙が溢れていた。




途中で力が抜けちゃって、立ち止まった。

真剣な顔をした敦盛くんが、残りの距離を走ってくれる。


その勢いのまま。私はいっぱいの力で抱き締められた。






「敦盛くん‥‥‥敦盛くんっ!!」

「約束を、果たす為に戻った‥‥‥」





間髪入れずに、キスをしてくれた。
間違いようもない。

正真正銘の彼。





「お帰り」


「ああ‥‥‥‥‥ゆき、ただいま」











腕の中で、温もりに包まれた。

全身の感覚で彼を感じたいから、私は眼を閉じると、またキス。











ねぇ、敦盛くん。




私はね、あなたと言う海がいないと

暁なんかになれないんだよ。





どれだけ待っていたのか。
後で教えてあげるね。








けれど、その前に‥‥‥




「あ、敦盛!久し振りだな。どこから帰って来たのかい?」

「俺は何もしてないからな!全部ヒノエが‥‥‥」



「‥‥‥‥二人とも、私のゆきに触れていたが



「気のせいだ気のせい!!」

「いや俺はゆきの手をマッサージしようと‥‥‥」



「‥‥‥私のゆきを口説いていたようだが」












二人が可哀相だから止めて上げようとしたけれど。
ずっと、夢でしか会えなかった彼の凛々しい表情にすっかり夢中になった。





「ゆきも止め 「怒った敦盛くんってやっぱり素敵‥‥‥(うるうる)」」



「「やっぱりそう来たか」」




四海流撃






 


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