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「行くよゆきちゃん!!」



差し出された、望美の手を



「おっけー望美ちゃん!!」



しっかりと繋ぐ、ゆきの手。




『デュアルオーロラウェーーーブ!!』



変身の呪文を唱える。

呪符などいらない。

空いた手で着物をバッ!!とはぎ取った(※帯は事前に外している)
籠に入っている布を取り出し身体に巻き付ける。


決めポーズ!!(※御想像にお任せします)



「キュアブラック!!」

「キュアホワイト!!」



どどーん!(※効果音)



「‥‥‥‥‥‥‥望美ちゃん、この後の決めゼリフって何だっけ?」

「‥‥‥‥忘れた」






「二人共何をやっているの?入るわよ」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥」



マイペースな朔の一言で『ふたりはプ〇キュア』は、変身しただけで幕を降ろした。










温泉の湯は少しだけ熱くて、疲れた身体にゆっくりと浸透してゆく。



「気持ちいいわね」

「ほんとだね〜」

「五臓六腑に染み渡るね!」

「ゆき、それはお酒よ」

「あ、そっか」




日が随分と傾いて来たのだろう。
東の空が夕焼けから宵へと移り変わっている。
温泉から立ち上ぼる湯気で視界が揺れる、空に浮かぶ一番星。




(幸せだなあ、私)



望美と朔とこうして空を見上げて、八葉のみんなや白龍と過ごせて。
戦が終わって良かったと、心から思う。



「綺麗ね」



ゆきの心を代弁するかのように、朔は呟いた。



「うん、綺麗」



ゆきも呟く。



「そんな事はどうでもいいけど」

「ちょっ何!?雰囲気ぶち壊しだよ望美ちゃん!!」

「せっかくいい雰囲気だったのに‥」

「あ、ごめんね!どうしてもゆきちゃんに聞きたい事があって!」

「私?なに?」



話を向けられてきょとん、とするゆきに、望美は真剣な目をして近寄る。



「正直に答えてね。‥‥‥敦盛さんとはどこまでいったの?」
















幼い頃にヒノエや弁慶とよく来た龍神温泉。
敦盛にとって、輝いた思い出の詰まる熊野での一幕。
久々の温泉は少しだけ熱くて、疲れた身体に染み渡る。



女湯から明るい声が響いてくる。



『気持ちいいわね』

『ほんとだね!』

『五臓六腑に染み渡るね!』

『ゆき、それはお酒よ』

『あ、そっか』



弾けるようにゆきは笑う。
何度聞いても飽きない声。



(まさかこんな日が来るとは思わなかった)



去年の夏に来た時は合戦の直中で、熊野には『藤原堪増』に熊野水軍の力を借りる為に来ていた。
敦盛も弁慶も、熊野の棟梁である人物が目の前にいるヒノエだと勿論知っていたが、知らない振りを通していた。

今よりも皆が秘密を抱えていた。
そして、自分も。





「望美たち、はしゃぎすぎではないか」



ぼんやりと湯につかる敦盛の横で、九郎は眉をしかめる。



「では、僕達もはしゃぎましょうか?」

「野郎と盛り上がっても楽しくなんかないね」

「僕じゃ不満ですか、堪増?」



弁慶とヒノエは仲良く喧嘩している。幼い頃から相変わらずの風景だから、敦盛は相手にしない。




少し経って、何となく会話が途絶えた頃、女湯から望美の声が聞こえてきた。




『あ、ごめんね!どうしてもゆきちゃんに聞きたい事があって!』

『私?なに?』




ゆきに聞きたい事。


思わず意識が傾いてしまい、女湯と隔てる壁に目を向ける。
いつの間にか、九郎とリズヴァーンと白龍を除く残りが、声の聞こえる位置へと移動していた。




『正直に答えてね。‥‥‥敦盛さんとはどこまでいったの?』




「‥‥‥っ!!」



一気に紅潮する敦盛に気付き、ヒノエと弁慶が仲良く、しーっ!と唇に指を充てている。




『どこまで‥‥‥って、うーん‥‥‥どこまで言えばいいの?』




「〜〜〜っ!!」



驚いたようにこっちを見てくる男達に、敦盛は激しく首を振る。

多分、ゆきの発言の意味は、皆の想像と違うと思う。
何を想像しているのか譲は真っ赤になっているし、ヒノエと弁慶と景時はニヤニヤしながらこっちを見てるし、将臣に至っては還内府時代の鋭い目を向けてる。



『どこまでって‥‥‥ゆきちゃん!そんなに激しい事をやってるの!?』



望美は直球だ。



『激しいって‥‥‥ち、違う違う!!そんな意味じゃなくて!!出かけた場所の事じゃないの!?』




やっと意味が解ったのか、大慌てのゆき。動揺しているのが声でもよく分かる。




『バカップルのデートの場所をつらつら聞いて楽しいと思う?』

『すみません。思いません』





(また、『ばか、ぷる』が出てきた)



将臣の言った意味は本当みたいだ。その割には望美の口調が冷たい気もするが。



『望美、そういうことは答えにくいでしょう?』

『え〜!朔だって本当は聞きたいでしょ?』

『まぁ‥‥‥‥ね。言われてみればそうね、好奇心は押さえられないわ‥‥』

『と言う事で、ゆきちゃん。どうなの?』



どうなの?と聞かれてもゆきは困るだろう。

男達はゆきの答えを楽しみにして目が輝いている。敦盛は逃げたくなった。



『何もないよ?』




当たり前のようにゆきは言った。


 


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