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「‥‥‥‥‥‥‥」


着替えたゆきを見て敦盛は固まった。


「あ、あの‥‥」


(似合わなかったかな)


不安になって俯くゆきを店主が褒めちぎる。


「これはまた大変愛らしい。よくお似合いです」


ねえ?と、店主に同意を求められて、敦盛は赤面して俯く。


「あ、ああ‥‥」

「‥‥」

「そ、その‥‥よく似合う‥‥」

「っ!‥‥あ、ありがとう‥‥」











店の中で見つめ合い、薔薇色の世界を作る二人。
呆れた店主は上手に追い出した。







「ゆき‥‥‥はぐれないよう、手を繋ごう」

「うん」




気がつくと、もうすぐ夕刻になる時間だった。

手を繋ぎながら色んな店を覗き、望美達へのお土産を買ったり、美味しい物を食べたり
‥‥あっと言う間に時間は過ぎた。





「荷物持たせちゃってごめんね」

「いや、気にしなくていい。私は、男だから」

「ありがと」



『男だから』の言葉に、嬉しそうなゆき。

敦盛の片腕に大量の荷物を抱え、もう一方の手はゆきの手を離さない。



(こういう所が男の人で‥‥ドキドキする‥‥)






「お腹空いたね」

「(さっき団子食べた気が‥‥)そ、そうか‥。ゆき、何が食べたい?」

「う〜ん、蜂蜜プリン!!」


元気のいいゆきの返事に眩しそうに目を細めて、手を少し引っ張った。



「では、そろそろ帰ろう」

「うん!」














「あ、そういや景時さんの部屋に行かなきゃいけないんだった!!」

「‥‥‥景時殿の?」


剣呑な目付きになった敦盛に気がつかず、
前方の団子屋を眺めながらゆきは説明する。


「本当は朝ご飯の後に呼ばれたんだけどね、忙しいみたいでいなかったから。
夕方に行きますって置き手紙残したの‥‥‥」



そこまで説明して、(焼き餅焼いたかな?)と思って振り返った。


しかし、敦盛は目線を宙に彷徨わせている。
何だか様子がおかしい。



「どうしたの?」


と尋ねれば、何でもない、と返ってくるが目を合わせてくれない。


「敦盛くん‥何かおかしいよ?」


心配そうな表情を浮かべる彼女。
敦盛は小さく息を吐き、目の前の小さな両肩に手を置いた。


「景時殿は‥もしかしたら、夜まで忙しいのかも知れない」

「そう?」

「ああ‥多分‥」

「??」


多分って何?

と思ったが、何となく聞いてはいけない気がした。




















景時は夕食になっても帰って来なかった。

何故か、将臣の姿も朝から誰も見掛けていないらしい。



「二人とも、どうしたんだろうね、ゆきちゃん」

「景時さん、忙しい時はいつも伝言くれるのにな‥‥式神も来ないし‥‥」

「兄上なら心配ないわ。そのうち戻って来るから」

「将臣くんの行方も気になりますよね。‥‥‥彼はどこに行ったんでしょうね、敦盛くん?」

「‥‥そうですね、弁慶殿‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

「神子、ヒノエの気が乱れてるよ

「そうなの白龍?ヒノエくん、震えてるけど何かあったの?」

「な、何でもないよ、姫君」

「九郎、柿はいいから魚を食べなさい」

「はい、先生!」

「兄さんと景時さんの晩ご飯は置いてるから大丈夫だよ」

「うん‥‥そうだね」

そういえば、朝から景時の気も微弱だよ

「えっ!!そうなの?」





「しかし本当に、あの二人は何処へ行ったんでしょうね‥‥‥‥‥‥‥敦盛くん?」

「さ、さぁ‥‥」














 


‥‥眠る前に、屋根の上で寄り添う二人。



奏でる笛の音を、優しい顔で聞く彼女。
幸せそうに目を閉じ凭れかかってくる。


一日の終わりを共に迎える幸福。



想いを告げて、
想いが重なって、
互いの存在を抱き締め合って、
‥‥一週間。



愛しさが溢れる。









笛を吹くのをやめて、いつの間にか膝の上で眠ってしまったゆきを見つめる。


安心しきった寝顔は、自分だけのもの。



額にそっとくちづけた。


起こさないようそっと抱き上げて、地面へ飛び降りる。



静かに、彼女の寝室へと運んでいった。

布団に寝かせ、今度は頬へくちづける。



「おやすみなさい、ゆき‥‥」



愛しい人の見る夢が、自分であればいいと思いながら部屋を出た。








二人の一日が終わる‥。










終わり
20070722





☆おまけ☆


行方不明の将臣と景時は夜も更けた頃に門前で発見された。

二人は記憶がなく、服がびしょ濡れになっていた以外は、特に外傷もなかったらしい。

真相は闇の中。





しかし、ヒノエは真相が判ってしまった。



そして、二人のびしょ濡れの姿を見て
「やっぱり四海‥りゅ‥
と敦盛から目を背けたヒノエの呟きを、たまたま隣で聞いた弁慶も。






  

 
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