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終わりを迎えれば、始まりはやって来る



始まればいつか終末を迎え






そうやって万物は流転してゆくの








永遠に変わらない事なんてないかもしれない




だから、願わずにいられない




いつか‥片方の命が潰えるその日まで


私達は比翼の鳥でありたいと








‥‥‥時が流れ、世界が変わっても


あなたと手を繋ぎ生きられますように













 





「えーっと、この子が一華で、こっちの寝てる子がヒノト」

「そうよ。覚えた?」

「う〜ん、多分」



赤子を抱いて降参と肩を竦めたのは、親友で戦友。
体調を崩した事もあり、産後彼女と会うのはかれこれ二回目だったりする。


腕の中で寝息を立てる私の娘と、私が抱いている男児とを見遣り、蕩けそうな表情を浮かべていた。




「いい名前だね。ヒノエくんセンスあるよ」

「あら、名付け親は別の人よ」




紫苑色の綺麗な髪を揺らして私の方を見た彼女の、問いたげな表情にくすくすと笑い返した。



それから眼を閉じて、遠い世界を思う。


いつか‥‥いつの日か。

また、逢えるのだから‥。




「もう、風花ったら意地悪なんだから!‥‥‥あっ!一華が笑った!可愛いーっ!!」



彼女が拗ねたのは一瞬。

直後、胸の底から産まれる黄色い歓声。


釣られて見れば生後二月の娘が、微笑に似た笑顔を浮かべていた。



「目が見えてるのかな?」

「まだぼんやりだけど、見えているそうよ。抱っこをした時に丁度母親の顔が見えるんですって」

「ふぅん‥‥」

「何?望美」




望美は私を見て、眼を緩めた。




「すっかりお母さんだね。眼がすごく優しい」

「‥‥‥世の中にはこんな愛情もあるのだと、初めて知ったわ」




見返りなど求めない。

ただ、愛しさだけが尽きる事無く溢れてくる。






「ヒノエに感じるものとはまた違うの」

「へぇ、そいつはオレも聞き捨てならないね」

「‥ヒノエ?」



いつの間に帰って来たのやら。



閉められた蔀戸の向こうから、愛しく想うもう一人の声がした。



「お帰りなさい。もう終わったの?」

「ああ。風花への恋慕が、この身を駆らせたからね」

「えー、何で?もっと仕事してきなよヒノエくん。せっかく風花と水入らずしてたのに」




流した眼が色っぽいヒノエと裏腹に、望美の頬は不機嫌と同じほどに膨らんだ。




「水入らず?ふっ、面白いね望美。それは夫婦を指す言葉だけどね」

「ヒノエくん知らないんだ?今では親友水入らずって言葉もあるんだよ」

「そういう事にしておこうか。今から夫婦水入らずの時間を過ごさせて頂くよ」

「うわぁ、嫌味ったらしい笑顔だね」




この二人は相変わらずの犬猿の仲。

望美はよく彼を睨む。

顔を合わせればこうして憎まれ口を叩くのが日常。





‥‥けれど、芯の部分では互いを信頼し、尊敬しあっている。
だから私は二人のじゃれ合いに口を出さないのだけど。





  

  
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