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「ん‥‥‥ヒノエ‥‥」
「‥ふふっ、可愛いね‥‥‥夢でもオレと逢瀬を重ねているのかい?」
紅い唇を僅かに開いて、オレの名を呼ぶ風花。
身体の芯が熱くなる。
「けど、妬けるね。夢のオレよりもさ、ここにいるオレが一番いい男だぜ?」
「‥‥‥ぅ‥‥ん‥」
ちゅっ、と音を立てて誘うかの様に開かれた唇を塞いだ。
柔らかくて暖かい。
まるでオレの為にあるような風花の全て。
寝顔を見ているだけで昨夜の風花を思い出した。
「‥‥風花。愛しているよ」
途中で起きたら続きをすればいい。
ただ、風花の乱れた姿を思い起こすだけで、出口を求めて熱がざわめいた。
夜着の袷に手を掛ける。
僅かにほどけた襟元から覗く白い肌に、オレが付けた紅い情痕が艶めかしく。
‥‥‥起きな、風花。
またオレを溺れさせなよ?
何よりも甘い口接けで、起こしてやるからさ。
「‥‥‥ぁ、ん‥‥‥ヒノエ‥‥」
まだ触れてはいないのに。
けれどこんなに色っぽい声を出して来る。
‥‥‥思い切り乱れさせてやりたくなった。
「風花」
「‥‥あ‥んっ‥‥ダメ‥」
「ふふっ、夢を見ながら感じているのかい?」
愛しすぎて堪らなくなる。
更に衿の中に進入させた手を、眠りながら風花は煩げに払った。
「‥‥‥ゴキブリが‥‥‥ダメ」
「‥‥は?」
風花?
なんだい?そのごき‥‥‥ってやつは。
「‥‥‥‥来ないで、お願い‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥怖い‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥。
やっぱり風花を起こしてあげるよ。
追い詰められた声。
前の時空の、辛い夢にでもうなされているのか。
顎を撫でる指に力を入れ、ゆっくりと這った。
快楽の芯を擽るように。
「‥‥‥ぁんっ!‥‥‥?ヒノエ」
「おはよう、オレの花嫁」
「え、ええ‥‥‥おはっ‥んぅぅっ!?」
風花の唇をオレの唇で塞ぎ、中を無茶苦茶に掻き回してやった。
「ヒノエ、放して」
寝起きで突然激しくされて相当驚いたらしく、オレの胸を押して離れようとするけれど。
「‥‥離さない。オレの風花‥‥‥」
抵抗と溜め息は、可愛い嬌声に混ざり消えていった。
‥‥‥オレに火を点けたのが何だったのか。
詳しく聞いた風花が笑うまで‥‥‥後少し。
「ところで『ごきぶり』って誰だい?事と次第によっちゃ、ただじゃ置かないけど」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥黒くて気付かない間に忍び寄る恐怖の対象‥‥かしら」
それを聞いたオレの頭に浮かんだのはある特定の人物だったが、何故か口に出すのが憚られた。
「安心しな。オレが守ってやるよ‥‥‥何からも」
「ありがとう‥嬉しい」
守ってやるさ。
お前は最愛の妻であり、もうすぐオレの子を産んでくれる‥‥‥大切な姫君なんだから。
熊野別当に不可能は、ない。
ゴキ〇リを知らないヒノエの微妙なギャグにもならない短文。
しかも説明を聞いて浮かべたのが‥‥‥黒い彼(笑)←笑うな
ゴキは6000年前からいる最古の昆虫だよー、という類のツッコミはスルーしてあげて下さい。
20080522
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