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「ヒ ノ エ ?僕達を無視するなんて随分偉くなったんですね?」
「‥‥何でアンタまでいるんだよ、叔父さん」
「風花殿が是非にと呼んでくれたので。女性の頼みを無碍に出来ないでしょう。ねぇ九郎?」
「ああ。久し振りに皆の顔を見るのもいいものだからな」
「ま、そういうこった」
「‥‥野郎が並んでいるのを見てもね」
弁慶さん、九郎さん、将臣の言葉を聞いて更に渋面を作る綺麗な顔。
それを見た望美が得意げに笑う。
「ヒノエ殿、早く座って頂戴?始められないわ」
「ああ、朔ちゃん‥」
広い室内を埋めるのは‥‥以前、共に戦ってきた仲間達。
平和を取り戻してすぐ、熊野に戻り私と婚姻を遂げたヒノエ。
それからは熊野の頭領として生きている。
彼にとっては当然のことなのだ、けれど‥。
‥‥‥こうして、皆で集まる事などあれから一度もなかった。
「たまにはこういうの、同窓会って感じでいいよね譲くん!」
今日だけは、頭領でなく。
あなたが、ただのヒノエでいて欲しいと。
そう思うのは、私のエゴなのかも知れない。
「ええ。こうして皆と会うと、あの頃が懐かしいですから」
「‥‥感謝する、風花殿」
敦盛殿が深々と頭を下げる隣で、リズ先生も覆面を下げて目を細めた。
「お前も早く飲めよ」
「野郎に注がれた酒なんか飲める訳ないだろ」
そのまま私の隣に座ったヒノエの肩に手を回して、強引に酌をしているのは将臣。
笑ってしまうと、眼が会った。
「おめでとう、ヒノエ‥‥‥生まれてくれて、嬉しいわ」
改めて祝いの言葉を口にする。
「風花」
空いた方の腕が伸びてきて、私の腰をぐっと引き寄せ‥‥。
「‥‥‥んっ」
「今年はオレの完敗だね」
強引に塞がれた唇が離れると、ヒノエの眼が強い光を帯びた。
「今夜は覚えてなよ?返礼は弾まないと男が廃るってね‥‥‥‥眠る間も与えない」
「‥楽しみにしてる」
いつの間にか離れた将臣の腕。
それをいい事に、ヒノエの顔がもう一度近付く。
皆の見てる前で、なんて‥‥。
「‥‥ありがとう。愛してるよ、オレの風花」
躊躇いや恥ずかしさは、珍しく照れた笑顔の彼を前に融解する。
愛しさを込めて、眼を閉じた。
「っ!!だーかーらーっ、風花から離れてよっ!!」
「‥‥‥譲。望美はまだ風花を好きだと言っているのか?」
「どうもその様ですね九郎。譲くんも大変でしょう?」
「‥‥‥‥はぁ」
宣言通り、その夜は一睡も出来なくて。
酔い潰れた皆から随分離れた別室で、一晩中キスを繰り返した。
想いが、繋がった身体から
少しでも伝わればいいのに。
いつだって、あなたが傍で抱き締めてくれる幸せを。
あなたの大きな愛に包まれて、
私はずっと生きているの。
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