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その至高の宝玉は、今オレの手元にある。
「‥‥‥ありがとう、風花」
小さく笑い返せば、風花は更に甘く笑う。
誘うような唇に乗せられた事にして、唇を重ね、舌先で辿った。
風花の口内で、弱い部分だけを攻め立てる。
「‥‥‥‥けど」
「‥‥は、ぁっ‥‥」
息が上がったのか、快感を生み出したのか。
声が弾み始めた頃に、わざと唇を離す。
‥‥‥‥‥普段は芯の通った黒玉の眼が、オレを欲しがるその瞬間。
潤む眼差しが愛しくて、つい何度も浮かばせてしまう。
「お前がくれるのは、言葉だけかい?」
「意地悪ね。分かっているくせに」
「さぁね。オレの花嫁は他に何をくれるのかな?」
「‥‥‥何が欲しいの」
言葉遊びに至極似て、互いを昂ぶらせる、睦言。
「‥‥‥‥‥‥お前が欲しい」
低く這うように囁けば、風花の身体が熱くなるのを感じた。
「アイツはなんて?」
「‥‥‥‥安定期に入ったし、少しならって」
昨日、風花を診にやって来た弁慶の言を聞いた。
少しなら激しくても大丈夫だと。
「だったら少しだけ。オレの姫君の鳴き声を聞かせろよ」
「‥‥‥馬鹿」
抱いた風花が壊れない様に気をつけて、邸に入った。
風花が甘い声を上げる。
眼が潤んで、普段から想像出来ない位に乱れるお前を見るのが好きだった。
姫君のこんな表情を見る事が出来るのは、オレだけ。
‥‥‥オレの腕の中だけで泣く大輪の花。
「あなたの誕生日に私がいるのは、三度目になるわね」
「‥‥‥へぇ。覚えてくれていたのかい?嬉しいね」
「あの日がそうだったと思い付いたのは、ずっと後なんだけど」
こうして生誕した日を祝うようになったのは、お前の世界の風習を受けてのことだ。
運命とやらは粋な計いをしてくれたようで、
二年前は出会いを
去年は最愛の花嫁を
そして今年は‥‥‥
「野郎と姫君。風花はどっちがいいんだい?」
「そうね、元気ならどっちでも。ヒノエは?」
「男ならオレに似て、姫君が放っておかないだろうね」
「はいはい」
「姫君ならお前に似て‥‥‥‥‥‥」
「私に似て?何かしら?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥まずいな、横から男に奪われない様にしないと」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥恋人でも出来たら大変ね」
今年は、お前とそして新たな「家族」への愛しさを。
「少しだけ」激しい情熱が温めた、風花の身体。
冷えない様に抱き寄せて、褥の中で眼を閉じた。
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