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『‥‥‥ごめん‥‥‥風花‥‥』
『ヒノエ!?‥‥‥ヒノエ!!‥返事をして!!』
お願い、どうかどうか‥‥‥
奪わないで。
愛しているの
彼が、大切なの。
誰よりも、何よりも。
「‥‥風花‥‥‥風花?」
「あ‥‥‥」
良かった
生きててくれたんだ。
‥‥‥そう思い次の瞬間、それが夢だった事に気付いた。
「おはよう姫君。今日も‥‥‥‥‥風花?」
ヒノエは少し驚いた顔で、私の頬に手を伸ばした。
掬う仕種で気付く。
また泣いてる、私。
込み上げるモノを押さえ切れなくて
勢いよく飛び起きて、彼の胸に飛び込んだ。
「風花?」
あやすように背を撫でる彼に、更にきつくきつく抱き付いた。
「ヒノエ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥怖い夢でも見たのかい?姫君」
掠れる声に、私は首を縦に振った。
「‥‥ヒノエ」
「‥大丈夫だよ、風花。それはただの夢だから」
それっきり黙って背中を撫でてくれる優しい手に、不思議な程落ち着いた。
‥‥‥でもね、私は知ってる。
あれはただの夢じゃない。
遠い遠い時空の果ての
【現実】
ヒノエは何も問わない。
私がどんな夢を見たのかを。
時折、こうして抱き付いた私を、ただ黙って抱き締めてくれる。
そして、何度も「愛してる」と囁いてくれる。
私が、落ち着くまで、何度も。
この聡明な彼が私の様子を見て、夢の内容に気付かない筈はない。
それでも口にしないのは、きっと
彼もまた、恐れているからかもしれない。
私達は何があっても離れない。
それは互いに分かり切っている。
けれどただ一つ
恐れるのは。
運命には抗えない‥‥‥
落ち着いたけど、それでも私はヒノエの胸の中にいた。
「ねぇ、ヒノエ」
「‥‥‥なんだい?」
顔を上げる。
視線がぶつかる。
「‥‥‥ヒノエが欲しい」
途端に煌めく紅。
「珍しいじゃん。風花が朝から求めて来るなんてさ」
「ダメ?」
「まさか」
クスっと小さく笑みを漏らす。
間髪入れずに落ちる唇。
深く、深く、激しさを増すキス。
唇に翻弄されていくうちに、気が付くと褥の上に押し倒されていた。
「オレの花嫁の願い事を、聞かない訳にはいかないからね」
「‥‥‥随分と殊勝な心掛けね」
「当然。知らなかったかい?風花はオレの‥‥‥熊野別当の、唯一の弱点だって」
「知ってる様な、知らない様な‥‥かしら?」
キスの合間に、途切れ途切れの会話。
一旦キスを中断させて、私の眼を覗き込み妖しく笑う。
「‥‥‥今から証明してやるよ、風花」
「‥‥‥‥‥‥ん‥‥‥」
今日は私だけでなく、
ヒノエも余裕がなかった。
指先が這っても、
息が熱く燃えそうになっても
唇を合わせたまま。
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