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『‥‥随分と馴れてきた、か』

『‥お陰様で‥‥っ‥んっ』

『クッ‥‥いい眼をしてるぜ‥‥?俺を煽っているのか‥‥』

『‥‥あ、っ‥‥おって‥ないってばっ』




知盛の動きが一段と激しくなる。

意識を手離しそうにならないように、逞しい首に必死に縋り付いた。










現実でもなく、妄想でもなく

二人だけの夢世界で交わす情熱は、私に愛しさを刻み付けてくれた。









色鮮やかな花の褥で、互いの身体を抱き締めあう。



『ねぇ、知盛』



そっと名を呼べば気怠そうにこちらを見る、その眼差しさえ心震える。

面倒そうに見えるけれど、しっかり話を聞いてくれる人。




『今回は何ヶ月振り?』

『‥‥‥三月』

『そっか』



いつからか。
多分、初めて身体を委ねたあの日から。

こうして私は知盛に、私と会わなかった期間を尋ねるようになった。


今回は三ヶ月振り、と言う。
前回は半年と言っていたっけ。


‥‥けれど、私は満月の度にあなたに会う。





会う度に知盛は大人びていくのに。
私は変わらないまま。


差がどんどん開いていくのは切なかった。



『流石に子供を抱いてる気分になる?』

『‥‥何の事だ?』

『私は変わらないじゃない。知盛だけが大人になっていく』

『‥‥‥』

『追いつけないのは悔しいね‥‥』




彼がモテない筈はない。

貴族の彼の周りには、きっと女の人が一杯いるんだと思う。
最近なんて、逢瀬を重ねる毎にどんどん色っぽくなった気がするのだから。



一体誰が、あなたを変えているのだろう。

誰を抱いてるの?

誰を愛しているの?




‥‥‥私以外、誰も愛さないで。



言いたいのに、私にはそんな権利が‥‥ない。







『クッ、変わってない、か‥‥‥笑わせる』

『え?』

『‥‥‥‥お前は何も知らぬ』



褥に押し付けられてぐっと圧し掛かった重み。

視界に知盛の顔で、背後に不思議な色の空だけが映る。



『俺が何を思い、何を欲するのか』



紫の眼が強く私を射抜く。

震え上がりそうな強い、肉食獣に似た視線に私は何も返せない。

身動けばその瞬間にも殺されてしまいそうな危険な匂い。



‥‥‥これが本当のあなたなの、知盛?





『‥‥お前を殺せば、俺の手に入るのか』

『‥‥知盛』

『お前の眼を潰せば、他の男を映すことはない。喉を掻き切れば、お前の声を聞く者はない‥‥埒も明かぬ考えだが、な』






それは激し過ぎる嫉妬と独占欲。







『‥‥俺が怖いか、あかり?』

『ううん‥‥嬉しい』



笑った瞬間、唇が塞がれる。
知盛の激しい想いとは裏腹に、今度のキスは甘く。






胸が苦しいほど、あなたが愛しい。





『好き、だよ。知盛だけが欲しい』



この眼が映すのも、この声が想いを込めて囁くのも、全て知盛だけ。

そっと耳元で囁けば、知盛がニヤリと笑った。




『ほぅ‥‥‥やはり俺を煽っているのか』

『‥‥‥煽られてくれる?』

『愚問だな』




再び熱くなってゆく、身体。



夢なんかじゃない。

私達は何処かで繋がっている‥‥‥。







『‥‥‥俺を束縛出来るのはお前だけさ』



絶頂に辿り着いた瞬間、知盛の言葉が聞こえた気がした。










 

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