I'd risk my life to protect you. (1/1)
彼はいつも真っ直ぐだ。
良くも悪くも、自分を偽ることをしない。
時に仲間内で鈍感と言われるほどの純粋さすら、長所に見せてくれる稀有な人。
──俺はみんなを守ってみせる。
いつからだなんて覚えてない。
時には自らを奮い立たせる様に、時に運命に強く言い聞かせるよ様に、真っ直ぐ言葉を紡ぐ彼をいつしか目で追いかけていた。
弟よりも色素の薄い青が、その一瞬強く煌く事に惹かれていた。
長い長い間、秘めた恋。
「変じゃないかな?」
「ううん‥‥‥ユイ、すごくきれい。お姫様みたい」
「あ、ありがとう。ソフィも凄く可愛いよ」
アスベルがいつもするみたいに少しだけ低い頭を撫でると、結い上げた綺麗な髪がさらりと指に滑った。
クロソフィの花をイメージしたミニのドレスに頭には白レースのリボンのソフィが、緊張したようにこくりと頷く。
「緊張してるね、ソフィ」
この顔は、アスベルがソフィにお願いした役目は「命懸けで」遂行する位の覚悟でいそう。
「うん。どきどきする。ユイも‥どきどき、してる?」
「してるよ。でも、ソフィがいるから大丈夫」
「‥‥‥アスベルも?」
「あ、う、うん、アスベルもいてくれるから‥‥それに、皆も来てくれるもんね。心強いよ」
旅が終わり、未来に向けて忙殺されていた皆が、今日は此処に集う。
あの日以来会っていない人もいるんだから、まるで同窓会みたいで弾む心。
「おーい!ソフィもユイも早くー!」
「こら!花嫁を急かさないの」
階下から懐かしい声が聞こえると、私の首にネックレスを付け終えたメイドが支度の終了を告げる。
「パスカルとシェリアも着いたんだね。行こう?」
「待って。アスベル呼んでくる」
「え?でも、」
「アスベル、きっと一番に見たいと思ってるから」
「そ、ソフィ!?」
「仕方がありませんわ。今日のユイ様はとてもお綺麗ですもの」
引き止める声も空しく、ぱたりと閉じられたドア。
アスベルの妹のような娘のようなもうすっかりラント家の一員である花嫁介添人を、私の今の格好で止められる筈もないのだ。
「ユイ、いいか?」
「え?‥‥アスベルってば」
ぽかんと口を開けたまま取り残されたのは一瞬で、それからすぐに聞こえた声。
彼が廊下で待っていたのだと証明していた。
「ソフィがもういいって‥‥‥あ、」
「‥‥っ」
ドアから顔を出しぴしりと石よろしく固まったのは、アスベルその人。
その彼を見た瞬間、激しく打つ私の鼓動は正直だ。
だって、だって、まだ夢を見ている気分になる。
一気に涙が溢れそうになって、堪えるのが大変なのに。
「‥‥ユイ‥」
「へ‥‥変じゃないかな?」
ぎこちない私の問い掛け。
その途端、魂が戻ってきたようにアスベルが目を細めた。
「いや。‥‥綺麗、だよ」
「アスベル?」
いつも真っ直ぐな強い眼差しが今は泣きそうな笑みを刻みながら、彼はゆっくりと近づいてくる。
触れ合うほど近くに来ると、その腕はそっと伸びてきた。
「まだ、夢を見てるみたいだ。ユイが、綺麗だから‥」
「‥‥‥私も」
彼はシェリアが好きなんだと、半ば諦めていた長い恋。
そして彼もまた、彼の弟と私が結び付いていると信じ、想いを封印していた。
互いに望んだ夢は同じなのに、擦れ違っていた切ない日々を思い出す。
辛くて、逃げ出したくて、でも、離れたくなかった。
「アスベルのお嫁さんになれるなんて、夢みたい」
込み上がる愛しさを声にすれば、壊れ物のように抱きしめてくれた腕の力が強まった。
「だが‥‥もう、夢じゃないんだ」
「うん」
「俺は、お前をずっと守る」
「‥‥じゃぁ、私もアスベルのことを守るね。アスベルがずっと笑っていられるように」
私が傍にいる時のアスベルが、一番笑顔になる。
いつだったかそうソフィが言ってくれたことが頭の中で浮かび上がる。
「──居てくれ、ユイ」
愛してる。
耳元で囁いた後、二人だけの空間で誓いの儀式をする為に、目を閉じた。
I'd risk my life to protect you.
「兄さん!ふしだらなっ‥‥!?ふがっ」
「しーっ、今いい所なんだから、弟くん!」
「ふっ、ヒューバートには刺激が強すぎたか」
「‥なっ、何を言うんですかマリクさんっ」
「シェリア、パスカルも教官も楽しそうだね」
「もう、二人とも‥‥ソフィの前でやめてください!」
I'd risk my life to protect you.
「命を懸けて君を守る」
今マイブームなTOGです。エンド後の設定ですがネタバレはしてない筈(笑)
アスベルの真っ直ぐすぎる所が大好き。
人の持つ狡さも弱さも涙も全て受け入れてその上で「守る」と言える、こんな主人公も大好きです。しかも季史さんの声と同じ声優さんなんて素敵だ(ここ重要)
このヒロインとアスベルで両想いに至るまでの書きかけがあるんですが、ちょっとした連載並みに長そうなのでそのうちに(笑)
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