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「明日は取り敢えず好きなだけ寝ようかな‥‥‥でも、折角の休みに寝て過ごすのは勿体無いなぁ」



かと言って世間では平日。
地元に帰って友達に会う‥‥のは、いくらなんでも急すぎる。



「う〜ん」



風呂上りの身体からほんのり上る湯気と、大好きなバスソルトの匂い。

程よく暖まってさっぱりした心地好さのまま眠るのが大好きな私は、即効ベッドに入る事に決めた。


現在夜8時。


これなら朝までたっぷり眠れるし、明日を睡眠で潰さなくても快調だと思う。

うん、我ながらいい考え。
なんて気を良くしてシーツを被れば、すぐに眠気が訪れた。








‥‥‥聴いた事のあるラブソングが流れたのは、うとうとしていた時。







何の曲だったかな?好きなメロディなんだけど。
着信音に設定したような‥‥‥でも、誰のだっけ?



「‥‥、もしもし‥?」

「‥‥あっ、ごめん!恋ちゃん。もしかして、寝てた‥?」

「‥‥ん〜寝‥‥‥‥‥‥‥‥‥えっ!?」




耳に心地好い声が聞こえて、頭が一気に醒めた。




「しし、詩紋くん!?だ、大丈夫寝てないよ!ちょっとボーっとしてただけ」

「‥‥そうなんだ。ごめんね」

「‥う、ううん。どうしたの?何かあったの?」



「ごめんね」の声が、私が眠りかけてたことも分かって言ってるでしょ?と思うくらいに優しい。
私は無性にドキドキして、動揺を隠す為に慌てて問いかけた。


携帯越しに聞こえるクスクス笑いに頬がかぁっと熱くなる。



「何か‥あったかも?そう言えば僕、恋ちゃんに電話した事ないなって思ったから」

「え、あ、うん。初めてだよね。び、びっくりしたっ」



そう言えば仕事を始めた頃に番号を交換して一度も、電話はおろかメールだってしてない。

だから一瞬、詩紋くん用の着信音が新鮮と言うか‥誰か分からなかった。



「急にごめんね、そろそろ動き出したくて。それより明日オフなんだよね?」



動き出す?
何の話なんだろう。

チラッと思ったが、それよりも次の言葉が引っ掛かった。



「どうしてオフって‥?」

「松本さんに聞いたんだ。今日、君の事務所に行ってきたから」

「事務所?」



詩紋くん、うちの事務所になんの用だったんだろう。



「うん、ちょっと話を‥‥ってごめん、電池がないから用件だけ言うね。明日用事あるかな?」

「?ないけど‥」

「良かった。じゃぁ10時に迎えに行くね。マンションの下で待ってるよ。じゃぁ、お休み」

「‥‥え?詩紋くん待っ‥‥‥‥‥‥切れちゃった」





通話が切れ、沈黙を決め込んだ携帯を手に、暫く呆然とした。





‥‥明日、詩紋くんに会う?

バレンタインデーからこっち、顔をあわせずに済んで少しホッとしていたのに。
どんな話をしようか。凄く気まずい。



「それより‥‥なに、着て行こう‥?」



クローゼットを開けながら、妙に心臓が煩いと感じていた。






 


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