小悪魔に邪魔されても (1/1)

ぱちぱちと瞬きをしてみる。

それからごしごしと瞼を擦って、何かを期待しながら眼を開けるのだけど──やっぱり何も変わっていない。

「……知りませんでした。ガイさんは、アニスさんと懇意にされているんですね」

皮肉ではなく、ありのままの事実をぽつりと洩らして、ゆっくりと踵を返した。じんわりと眦に浮かぶものの正体は気づいてる。だから背を向けた。

「っ!アニス、降りてくれ!」

「はぁーい。……あーあ、やばいとこ見られちゃったぁ?」

アニスの独り言が追い討ちとなって、私は居たたまれなくなり走り出した。ガイさんが、私の名を呼んだ。

振り向かずに走り続ける。風を切る音が煩くて、他には何も聴こえなくて……スカートの裾が邪魔で仕方なかった。

以前にガイさんに褒めてもらってから、嬉しくなってよく穿くようになったチェックのロングスカート。無性に脱ぎ捨てたくなった。

「──ヒナ!」

腕を強い力で掴まれ、体勢を崩す。傾く身体に、涙が零れて地面に落ちた。腰をしっかりと支えられて、ぐっと引き寄せられる。

「誤解だ……っていうのは、信じてくれるか?」

「…………」

ふるふると首を振ると、ガイさんはため息をついた。しっかりとした胸板に押し付けられているから、吐息が耳元に掛かってぴくりと肩が揺り動く。

「アニスが『女性恐怖症が本当に治ったか確かめる』って言い出してな。いきなり乗っかってきたんだよ」

「……証拠はないです」

鼻声で洩らして、視線を下げた。理屈っぽい私は嫌い。すぐに信じてることができない私も嫌い。

「証拠はある」

「……なんです?」

「俺はヒナしか愛してない」

唐突過ぎる愛の告白に、私はぽかんとして眼を丸くするしかなかった。

恥ずかしいキザな台詞を、きっとガイさんは真顔で言った。顔は見えなくても、それは容易に想像がついて、頭に浮かんだと同時に小さな笑みが零れていた。

「ふ、ふふっ……そんなことを堂々と、は……恥ずかしくないのですか?」

「本当のことだからな。証拠はちゃんとあるし、信じてくれるかい?」

「……まだだめです」

ここで素直に頷くのは、私らしくないことだから。口元を緩めて、ガイさんを見上げて、背伸びをしながら小さく耳打ちをする。

「私にもアニスと同じこと、させてください。そしたら、信じてあげます」

「……そういうことなら、喜んで。だけど、ヒナは同じことだけじゃ済まないかもな」

「望むところです。あ……でも、破廉恥なことはだめですからね」

ちょっと顔を赤くして呟くと、ガイさんはぱちりと瞬きをして、それから声を上げて笑ったのだった。






小悪魔に邪魔されても






(結局はらぶらぶってことですよねぇー。あーあ、つまんなぁーい)

(趣味が悪いですねぇ、アニス。要するに邪魔したかっただけでしょう)

(えー、アニス、そんなヒドイことしないですよぅ!アニスは小悪魔じゃなくて、恋のキューピッドなんですぅ!)


end.



リオちゃんにガイをお願いしちゃいましたーーっ♪
ガイ!ガイ!頂いた時のハイテンションをお見せしたかったです(笑)
この天然なキザっぷりがたまんない!ガイ愛してる!(はいはい)
もう、何でも書けちゃうリオちゃんの才能に惚れ込んでおります。

TOAのパーティの男性陣はギャグもシリアスも甘いのも全部似合いますよね、あ、ルーク以外ですが。
天然色男のガイが大好きです。ラストでルークに言った台詞なんかはもうガイらしくて、色々と葛藤があってのあの言葉なんだと思うと泣(長いので終了)

佐助さんや政宗に続いてガイまで書いてくれるなんて夢のようですっ!!
リオちゃん、ありがとう!だぁぁぁぁぁいすき!!


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