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「‥‥弁慶さ、んっ‥‥‥!?」



知盛の足音が消えた、そう思ったときには弁慶の腕の中に居た。

息もつけぬ程きつく抱きしめられる。



「えっ‥‥‥み、皆見てるよ!?」 

「‥‥‥怪我、させてしまいましたね‥‥」

「怪我?‥‥‥‥ああ、これ」



肩に埋められた顔からは、弁慶の表情を窺い知ることは出来なかった。


苦渋の滲む声音で言われて見れば、確かに首筋が痛い。
でも皮一枚を切り裂かれた傷は、そう大したものではない。






‥‥それよりも。







「大丈夫、ですから‥」

「‥‥‥君を護ると言ったのは僕なのに、護れませんでしたね」

「そんな事ない!弁慶さんは私を守ってくれたもん!」




きっぱり言い切ってゆきは弁慶の背を撫でた。



何となく、そうしなければいけないような気がして。

彼が自分を責めている気がして。




周りに望美達が居て、皆見ている。
それすらもゆきは忘れることにして、ゆきは弁慶を抱き締める。

震えはもう、止まっていた。





怖かった。


震えた。




でも弁慶が来てくれたときの、あの安心感。




眼が合っただけで‥‥‥ああ、もう絶対大丈夫だ、とどっと力が抜けた。








「助けてくれて‥‥‥ありがとう」

「‥‥‥ゆき」





いつも、強くて優しくて掴めないこの人が


やけに‥‥‥愛おしくて、守ってあげたいと思った。












act11.だから、傍にいて

20081128
 


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