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「では泰衡。息災でな」
「‥‥お前も、九郎」
伽羅御所へ挨拶を済ませた望美達は、秀衡の「また来る様にな」との言葉に頭を下げた。
最後の面会を終え、彼の前を辞せば、泰衡が門前まで見送りに来てくれていた。
聞けば幼馴染だったらしい九郎と泰衡が話しているのを見れば、
打ち解けているらしく、若干泰衡の表情が柔らかい気がした。
「ありがとうございました、泰衡さん」
「‥‥‥ああ」
「‥‥ところで、銀殿はどうしたんだ?」
「そういやゆきちゃんも、御館の挨拶が終わってから見ないね〜」
「ああ、二人なら話があるといって庭にいますよ」
九郎と景時に答える弁慶に、皆は不思議そうに眼を向ける。
‥‥あれ程、独占欲が強いのに。
今となっては誰もが知っているのに。
「最後位はきちんとけじめを付けた方がいいでしょう?後腐れのないように」
掴めない笑顔が妙に怖い。
「‥‥‥‥やっぱり敵に回したくない人だね、弁慶さんは」
「そうですね‥‥‥元宮の手に負える相手じゃない気がします」
「ええ、でも‥‥‥ゆきに振り回されているのは、結局‥」
朔が続けようとした時だった。
「すみませ〜んっ!お待たせしました!!」
「‥‥相変わらず煩い女だ」
ぱたぱたと足音軽やかに、門の中から出てきたゆきは、わき目も振らず弁慶の元へやってきた。
後ろを付いて来た男をちらりと見て、それから弁慶はゆきの肩に手を置く。
「話はもう済みましたか?」
「はい!待ってくれてありがとうございました!」
「そうですか。では、泰衡殿にもご挨拶してくださいね」
「‥‥はい。お世話になりました」
渋々と頷いて、ゆきは平泉の御曹司とその従者に頭を下げた。
「また、お会い出来る日が来ることを願っておりますね。ゆきさん」
「‥‥せいぜい、弁慶殿を飽きさせぬ様にするんだな」
「なっ‥‥!!やっぱりムカつくーーーっ!!」
「まぁまぁゆきちゃん、落ち着いて」
「望美さんの言うとおりですよ、落ち着いてゆき。泰衡殿も‥‥あまり彼女に手を出さないでくださいね」
「頼まれようと妙な奴に手など出す訳がない」
「‥んだってこらー!!」
蒼く澄んだ空に
ぶち切れた叫び声。
とても、平和だった。
act7.我儘でもいいから
20081102
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