(1/4)



見上げた夜空


星が溢れそうに ひしめいて


泣きたくなる







もし、私を星に喩えるなら

   小さくていいよ



隣で瞬いていられるなら、それで









――あなたっていう優しい星の、側に




















ドン!と重低音が昼下がりの曇天に響いた。





「‥‥‥っ!!」

「もう終わりかな?」

「ま、まだまだぁっ!!」

「ゆき、限界を知る事もひとつの成長に繋がると、何度も言った筈だが」


からかう様に笑いを含んだ男。


「限界じゃないもん!」


悔しそうに呪符を構え直す少女。





京は一条、土御門邸。

古くから陰陽道の権威となって居た閑静な邸だった。
が、今ではどっかんどっかんと賑やかな音が、まるで祭の様に鳴っている。



ここ数年ですっかり定着した日常光景の発生源は、一組の師弟。



‥‥‥力の殆どを自ら封印し、後継者でありながらそれを放棄した土御門郁章と、

その弟子で、優秀な陰陽師になると期待されている元宮ゆき。





今日もまた術同士がぶつかりあう、どっかんと良い音が響いた。














「‥‥‥あ、りがと‥‥ございましたっ‥‥」

「お疲れ」



かれこれ数刻の後。


息を切らしてぐったりと庭に座り込むゆきに、涼しい表情を崩さない師がひらひらと手を振っている。



(く‥‥悔しい‥!)



何だかんだ言って好戦的な部分を持つ少女は、「さっさと帰れ」と言わんばかりの郁章を睨んだ。



「ああ、そうだ。先刻から君の迎えが待ちくたびれているらしい」

「はぁっ!?なんっでそれを言わないかなあっ!?」


信じられない。


郁章の事だから、迎えが来た時から知ってたはず。
ゆきには感知しにくい特殊な土御門の結界の中でも、郁章ならば人の気配を、容易に感じ取れるのだから。


意地悪な師をもう一度睨んで、ゆきは走り出した。




背後から聞こえる郁章の笑い声もまた、いつものこと。







 
BACK
栞を挟む
×
- ナノ -