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鈴の音が、清らかな空間を作り上げる

これは貴方の音。


「お前の願いを聞き届けよう」


私を包む慈愛の光に、深い声音に、感謝の念を送る。
貴方に喚ばれて、良かった。


「行くぞ」

「うん!頑張ろうね、  」

「無論」



‥‥‥ありがとう。

貴方の護るこの世界を、尊い貴方を、忘れない。

ずっと、ずっと。















act24.君だけが僕の生きる希望










ゆらり、ゆらり。
眼を覚ますと、淡く光る空間に身体を委ねていた。
床も空もなんにもない世界。
白い光が溢れているのに眩しくない、不思議な世界。

ここは、どこ?



───心配しなくていい。




心細さと不安をやんわりと抱擁するような、あたたかな声音。



───泣くな。




泣いてなんてない。
そう答えかけて初めて、目尻に堪った熱の存在に気付く。
どうして、泣いているんだろう?
意味も分からず、悲しい。
悲しくて、苦しい。



「君を──のは、これからも僕だけですからね」




‥‥‥誰?
この声を聞くと、かなしい。





「───なら、きっと、一番輝くあの星ですよ」



ねえ、誰?
眠りたいのに、どうして邪魔するの。




「ようやく君を捕まえられた」

「君を失った世界はもう色がない。何もかもが光をなくして‥‥‥」

「愛しています」




この人も、泣いている?
泣かないで。
どうしてかな、こっちまで悲しくなる。







「僕が君を、守りますから」








あなたは‥‥‥誰。



───何も、考えるな。身を委ねていれば良い。




声は囁きかける。
ゆりかごみたいに、母の腕みたいに、己の存在全てを柔らかく包んでくれる。

此処に居れば。
この光は、全てから守ってくれる。
原因不明の焦燥も、訳の解らぬ悲しみも、今抱いている感情の全てを放棄して、眠れば。



───おやすみ、いとしい娘。




うん。
声に出さずとも、頷いたのが伝わったのだろう。
空気がゆらりとまた揺れた。
眠る為に再び瞼を閉じる。


ごめんね。


意識を手放す寸前に謝ったけれど、誰に対しての謝罪だったのか。

もう、思い出せない。

 


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