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『あなたは、ここにいてはいけない』


嵐の様な濃い時間の名残と気怠さに眼を閉じながら、ゆきは思い返す。

弁慶の部屋を訪れる前の会話を。



『‥‥‥』

『私を巡る五行の力は殆ど満ちた。今なら私の力であなたを帰す事が出来るよ』


白龍の言葉に、眼差しがすっと冷えてゆく。


『‥‥‥そ、っか』


拒絶されているのではない。
寧ろ、その逆。

それは望美に対する無条件の慈愛ではないかもしれない。

けれど、包み込むような気を感じている。


『白龍は神様だもんね。知ってたんだ?』

『うん。ゆきの周りは五行が騒ぐから』


この京を守護する彼が頷くのだから、もう間違いない。


散々考えて、導き出した「可能性」。

郁章にどうしても尋ねたかった事柄が、紛れもない事実であることを。



いっそ笑えるほど。




『やっぱり、私はもう生きられないんだね』











(弁慶さん‥‥)


寝息を建て始めた彼の胸に、そっと擦り寄る。
彼の身体に染み付いた薬草の匂い。

そして額に滲む汗が、先程の行為の余韻をゆきに教えていて。

知らず涙が溢れた。


(大好き。一緒にいたいんだよ)


ずっと、一緒に。

遠い遠い未来まで、傍に居られるのが自分でありたい。










だけどもう、時間が僅かしか残されていない。





今の彼女の持つ力が、夢を呼び寄せていた。











act21.空の向こうで星達が泣いてる 

20100706


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