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「‥ふ、っ‥‥」
キスは止まることなく深くなってゆく。
首筋から、顎の先までそっと走る弁慶の指に、ゆき自身思ってもない程の甘い声が上がる。
それが無性に恥ずかしかった。
もう、止まらない。
弁慶が好きで好きで、好きすぎておかしくなりそう。
「‥‥‥お願い。知らない世界を、教えて」
「ゆきっ‥‥‥!?」
はっきり言ってまだ怖い。
まだ弁慶の優しさに甘えていたい気も、するけれど。
そんな事は、クラクラするほどの艶めいた弁慶の眼を見つめれば‥‥‥消えた。
「‥‥‥いいんですか?僕のものになるんですね?」
掠れた声が余計に色気を含んでいて。
背筋がぞくりと震えた。
「‥違うよ。弁慶さんを私のものにしたいの」
「僕を‥‥?」
弁慶のものになりたいなんて、可愛い感情じゃない。
誰にも渡したくない。
例え彼が、朝緋に揺れたとしても。
少なくとも今の弁慶はゆきを好きで居てくれるって分かったのが、嬉しい。
抱きたいと言ってくれたのだから。
だからもう‥‥朝緋に負けたと泣きながら、引き下がれない。
朝緋だけじゃなくて、望美にも。朔にも。
この世のどんな美女にだって、渡したくない。
‥‥‥あなたを私だけのものに、したいんだよ。
「ふふっ、ゆきは可愛いですね。でも僕の心はもう、君だけのものですよ‥‥‥全て」
心だけじゃなくて、身体も欲しい。
弁慶を自分に刻みたい。
そして弁慶に、ゆきを刻み付けたい。
重なりあった記憶を、身体が忘れないために。
「もっと‥‥‥弁慶さんの全部、私に下さい」
弁慶を真っ直ぐに見つめるその眼は、潤んでいた。
これから訪れる事への恐怖か‥‥‥期待か。
「‥‥‥ゆき」
弁慶の唇から漏れたのは、いつもより乾いた声で呼ぶ、愛しい響き。
「愛しています。だから弁慶さんを、あの‥‥私だけのものにしたい、です」
‥‥嬉しかった。
ゆきの口から欲しいと言ってくれた事が。
愛していると、自分を彼女のものにしたいと。
それは『弁慶のものになりたい』と言うよりも、もっと強い想いを感じて。
そんなゆきが愛しくて仕方ない。
思い切り抱き締めて、柔らかな唇に弁慶のそれを被せた。
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