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朝日が登る。


今日はいつもより早く起き、早い出発の予定だった。

昨日の疲労からか、昨夜はぐっすり眠れたゆきは、すっかり元気を取り戻していた。





嵐山に行く途中、九郎のいる神泉苑に顔を出そうと決まる。
神泉苑に雨乞いの舞を一目見ようと大勢の人々が詰め掛けていた。



「この神泉苑で雨乞いの舞が行われるんだよね」

「どんな舞かしら」



望美と朔が興奮している。



「ゆきは、舞に興味がないのかい?」

「うん全然」

「へ、へぇ‥‥」



ヒノエが引きつっているのはきっと気のせいだろう。


談笑している望美達の姿を見つけたのか、九郎が来た。



「どうしたお前達、俺に何か急用か?」

「ちょっと様子を見に来たんだよ。どう、もう始まるのかい?」



九郎と景時が話しているのをゆきは離れて見ていた。



「ああ、せっかく来たんだ。舞を見ていったらどうだ?」



九郎の提案に色めき立つ望美と朔。



(やっぱり女の子だな、二人とも‥‥‥‥‥って、私も女の子だった)


全く興味がない自分がおかしかった。

少し見て行きたいと言う望美が九郎と話をして、そこに八葉達が集まっていくのを輪から離れて見ていた。
そして、思い出す。



(初めてここで重衡さんに会った時も、桜が綺麗で‥‥)


本当にただ偶然に出会ったのだ。

けれどその偶然から偶然に結びついて、将臣と繋がった。

二人が知り合いだと思ってもみなくて‥‥。






そんな事を考えていたのも、偶然だったのか必然だったのか。



(‥‥‥‥あっ!!)



ちょうど今、考えていたから、感じたのかもしれない。


澄んだ銀の様な、涼やかな彼の金気を。



(追いかけなきゃ!!)



ゆきは望美達の輪に駆け寄った。



「の、望美ちゃん!ここで舞を見てくよね?」

「うん、見て行くよ」

「ちょっと抜けてもいい?」



走って息が荒くなっているゆきを見て、望美の隣に立っていた弁慶が怪訝な表情を浮かべる。



「‥‥‥‥どこへ行くんですか、ゆきさん?」

「お腹痛いから厠です!!」



躊躇せず答えるゆき。
まさかそんな答えを予想してなくて、弁慶ですら絶句している。



「は、はしたないぞ!ゆき!!」

「仕方ないよお腹痛いもん!じゃあ、後で戻って来ますから!」

「付き添いましょうか、ゆき?」

「いいよ朔!厠くらい一人でいけるから〜!!」



ゆきは走りながら、大声で年頃の娘らしからぬ発言を残していった。



「面白い姫君だね、ゆきは」



微妙な空気の中、ヒノエだけが爆笑している。







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