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ゆきちゃんはリズ先生を見ていた。
目を逸らせば先生が消えてしまう、って恐れているみたいに。
先生が『鬼』だからびっくりしたのかな、って思ったけど
‥‥‥きっと違う
そんな目じゃない
なにかあるんだ
ゆきちゃんが先生を見ている理由
ゆきちゃんですら気付いてない理由が‥‥‥
知りたい
ううん、知らなきゃいけない
‥‥‥ゆきちゃんのこと
『ごめ‥‥ね‥‥』
『喋っちゃダメ!』
あの時、息をするのも大変なのに、ゆきちゃんは必死に話そうとしていた
今じゃなきゃ、もう話せなくなるかのように
『わたし‥‥できな‥‥った‥』
『そんなこと‥‥』
『わた‥し‥の‥せい‥‥』
『違う!!ゆきちゃんのせいじゃない!!』
ゆきちゃんの手を握り締めて私は言った
冷たくなって行く手が辛くて悲しくて、額を押し付けた
止めどなく溢れる涙が、全てを流してくれる事を願って
――違うの、私がしっかりしていれば、こんな結末にならなかったの
『これで‥もう、だい‥‥‥じょ‥ぶ‥‥』
『・・・・ごめんね』
最後の言葉は謝罪だった
もう、あなたを失わない
私に出来る事、何でもするよ
そう決心して辿り着いた時空で、あなたは陰陽師になっていた
「みんなを守りたい」
そんな事、前の時空では一度も言わなかったのに
どうして運命が変わっているの?
私、まだ何もしていない
前の運命のゆきちゃんとは、明らかに違うあなたがここにいた
戸惑っているけど、私はもう迷わないよ
今度こそ、あなたを守るからね
だから今は、あなたの事を知らなきゃ
「ゆきちゃん、リズ先生と知り合いだったの?」
「‥‥へ?‥‥‥ううん。‥どうしたんだろ、私‥‥」
首をかしげるゆきちゃんに嘘はなかった
鞍馬山に来てからずっと様子が変だった、ゆきちゃん
きっと、ここに何かある
「もう日が暮れそうだから‥‥また今度、来ようよ」
「どうしたんだ?先生には会えたから、もう用事はないはずだが・・・」
「でも、来なきゃいけないんです。そんな気がするから」
私は言い切った
尚も納得のいかない九郎さんに、先生が援護してくれた
「神子には、私達に見えぬ何か見えるのだろう」
「はい、そうです」
「‥‥‥そうか。わかった」
渋々だけど九郎さんも納得してくれた
ありがとう、先生
きっとそこに、あなたを助ける道がある
待ってて
ACT10.憂う視線のその先に
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