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「‥‥‥ん‥‥‥うん?」

「起きた?ゆき」

「‥‥おはよう?」



朝起きたら見知らぬ子と抱き合っていた。




「ゆきの気は懐かしいね」

「‥‥‥はぁ‥‥そうですかぁ‥‥‥‥」



依然としてゆきの腕の中に収まったままの、白銀の子供を見た。

どこかで見覚えがある気がする。



「あ、あの時のかわいこちゃんだ‥‥‥うわあ‥久し振り」



そう思っていたら、彼は京に来る直前に学校で会った、あの可愛らしい男の子だと判明した。

と、ここまで来てようやくゆきの頭は覚醒して、すぐに違和感を覚えた。



(‥‥‥‥‥?)



この子供には人の気配がしなかった。

まだ、ちゃんと気を読める訳でないから難しいが、人が持つには綺麗に過ぎる気。
どちらかと言えば望美に近いかもしれない。
清らかな真っ白い気が、池のように溜まっているイメージがする。



「もしかして‥‥‥‥あなた龍神様?」



綺麗な子供は満足そうに笑った。



「うん。私は応龍の陽の極にあたる白龍だよ」

















感動の再会から一夜明けた。
昨日は「龍脈を見に行って」不在だった白龍も望美の隣りに座り、大人数で囲む食卓は活気に満ちている。


(最近ずっと一人か師匠と食べてたからなあ)


あの世界でも、ずっと一人で食べていた。
それが当たり前だったから、誰かと食べる事がこんなに嬉しいとは思わなかった。



「‥‥‥起きてすぐにね、白龍がお手玉に興味を持ったから教えてたの」

「ゆき、上手だったよ」

「それであんなにはしゃいでいたんですね、白龍」



ゆきの正面に座る弁慶がにこにこと笑っている。
















「‥‥落ち着いて考えられる場所が出来て助かります。これで帰る方法をゆっくり探せるから」

「帰る方法、わかるのかな?」



食事を終え、改めて朔に挨拶している譲。

隣に座る望美を、愛しそうに見つめる譲。


それは、自分の知るそのままの彼で。

二人を微笑ましい気持ちで見ている自分に、何より安堵した。


‥‥切なさは残るけど。



「前の白龍の神子も異なる世界から来たというわ。その方のことを知る人ならわかるのかもしれないけれど‥‥‥」

「ただ、前の白龍の神子が自分の世界に帰れたのかどうかもわかんないの。師匠の書物を読みあさったんだけどね」

「もしかしたら‥‥帰る方法は見つからなかったかもしれないということか?」



朔とゆきの言葉に譲は眼鏡を押さえながら考え込んでいた。
釣られて空気が少し、重くなる。



「譲達は、元の時空に帰りたいの?」



白龍が首を傾げて聞いた。
直球の質問に譲は苦笑する。



「そうだね。帰りたいと思うよ」

「神子は?神子は帰りたい?」

「やらなきゃいけないことを、ちゃんとやってからね‥‥‥‥‥ゆきちゃんは?」

「え?」



望美に突然話を降られてきょとんとした。

自分が異世界の住民だったことをすっかり忘れて、二人の答えに意識を傾けていたのだ。



「私?‥私は‥‥‥‥」

「ゆきちゃん?」

「私は‥‥う〜ん‥」



正直、今まで帰る事なんて考えた事もなかった。
この世界で生きていく為に、ずっと努力してきた。

だけど、帰る方法が出来たなら、自分は。



(‥‥‥今更戻っても、待ってるひとなんて、いない)



俯いて答えないゆきを、事情を知る譲が心配そうに見ていた。



(元宮は、きっと‥‥‥)



そこまで考えた譲は、今はそれ以上の考えを放棄した。








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