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「朔、白龍!今、助けるよ!」


(私のことを知っているの?)


ついさっき出会った白龍ならまだ分かる。黒龍の対なんだから、神子の自分が判るだろう。



「それより、今は──」

「そうね、怨霊を鎮めなくては」



朔と白龍と少女は怨霊と戦った。
彼女が刀を振るう姿は舞に似ていて、朔の目を惹きつけた。



「怨霊を封じる!朔、手伝って!」

「封じる?あなたは‥‥‥まさか‥いいえ、きっとそうなのね」

「白龍、私に力を貸して。私は、あの怨霊を封じたい!」

「わかった」



白龍が頷き目を閉じる。
柔らかな気の奔出を感じた。



「めぐれ、天の声!」

「──響け、地の声!」


『かのものを封印せよ!』



直後怨霊に向かう、白き浄化の光。

怨霊の姿を包み込み、硝子が割れるような音を立てて弾ける。

散った光の粒子が空気にキラキラと溶け込んで行く様は幻のように綺麗で、吹き込む風は生まれたてのように新しく感じた。



「神子、凄い!」



‥喜ぶ白龍を見て、朔は確信する。




怨霊を封じる力

業から解き放つ浄化の力


それを持つのは、ただ一人。




‥‥‥白龍の神子


清冽な浄化と癒しの光は、未だ見つからぬ存在でしか持ち得ないと。





黒龍の神子である朔は、やっと見つけた対の存在に、胸が熱くなった。



「私は朔。梶原朔というの。あなたの対、黒龍の神子よ」

「私は春日望美、よろしくね」






───雪が振り積もる、真冬の宇治新橋。


それが黒龍の神子梶原朔と、白龍の神子、春日望美との出会いだった。









ACT.befor7.真白き冬











今までの運命通り、朔と無事出あった。

その後彼女が、怨霊が一杯だから場所を変えよう、と歩き出した。
朔が橋姫神社に向かおうと言い出し、それに従う。


時々話をしながら歩き身体も暖まって来た頃、また怨霊が現れてしまった。



(橋姫神社に行かなきゃならないのに!)



気がつくと望美達は怨霊に囲まれていた。



(だめだ、ここを逃げなきゃ!)



逃げ道を作るには怨霊を一体でも倒して隙を作らねば。
そう思い、切りかかろうとした時だった。



「望美!いけない!」



もう一体の怨霊の刃が私を狙って振りかざして‥‥



「春日先輩!!」



叫び声と同時に私を背後から抱え込む、腕。



「譲くん!」




望美を庇った幼馴染みの肩に走る白刃。

‥‥自分の代わりに彼が怪我をしてしまった。



「このぐらい大した事ありません。先輩は大丈夫ですか?怪我はありませんね?」

「助けてくれて‥‥ありがとう」



申し訳なさと、精一杯の感謝を伝えれば、望美の無事を安堵してくれる優しい幼馴染みの有川譲。



(良かった、譲くんとはここで出会えた)













「危険です、先輩は逃げて下さい!」

「私も怨霊を何とかするよ」



どうにか自分を逃がそうとする譲の横で刀を構える望美。
でも、とさらに言い募ろうとする譲に、小さな男の子の姿をした白龍が頷く。



「八葉とは白龍の神子の剣と盾。絆があなたと八葉を強くするから」



白龍に八葉だと言われて戸惑う譲。
彼と朔と白龍は怨霊を浄化する為、力を合わせ‥‥‥怨霊に立ち向かった。


















「倒せたのか‥何だったんだ、今のは」



半ば呆然と呟く譲を指差し、白龍がゆっくりと告げた。



「有川 譲、あなたの、宝玉を宿す。八葉の力だよ」




譲の首には白い石。

宝玉と呼ばれるそれは、白龍の神子を守る八葉のもの。



───天の白虎、有川譲。


その後、頭の良い譲が異世界である『京の宇治川』だと認識するのに、さほど時間はかからなかった。








(譲くんとはここで会えた)




あとは、将臣とゆき。

この先で九郎と共に惟盛と戦えば、春に下賀茂神社で将臣に会える。


だけど‥‥



(今回は違う。九郎さんと行っちゃダメなんだ。私は確かめなくちゃいけない)









‥‥‥待ってて。

今度こそ、変えてみせるから。


今度こそ、

あなたを‥‥。















望美は固い決意を胸に、九郎と弁慶が待つ陣へと足を進めた。



「春日先輩?」

「どうしたの、譲くん?」

「いえ‥‥何でもありません」

「‥‥早く橋姫神社へ行かなくちゃね」

「‥‥はい」



思い詰めたように前を見据える望美を横目で見て、譲は首を傾げた。

今までずっと近くにいた幼馴染みと、今の彼女は何かが違う気がして。



(春日先輩‥‥?)







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