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「えええ〜っ!!景時さんって陰陽師なんだ〜っ!?」

「そうだよ〜。あれ?言ってなかったっけ〜?」



う〜ん、と首を傾げる景時にゆきは頷いた。



「聞いてないですよ。軍奉行だと知ってたんだけど‥‥陰陽師もやってるなんて凄いですね!」



思い切り褒めちぎるゆきに苦笑しながら、弁慶と九郎は話に入る。



「景時は優秀な陰陽師なんですよ」

「ああ。確かに優秀だ。源氏になくてはならない術士だな」

「でも普段がこれではね‥‥兄上」



弁慶と九郎の言葉で少し照れ笑いした景時を、朔がさらっと突き落とす。

いつもならここでゆきが宥めたり、一緒になって景時をからかったりするのだが



「ゆきさん‥‥目が輝いてますよ」



ゆきはキラキラした目で景時を見ていた。






「景時さん!!本物の陰陽術を見せて下さいっ!!」





胸元で手を組みお願いしているゆきを、断る者などいなかった。












ACT3.陰陽術式銃









ゆきが京邸の梶原兄妹の元で暮らし初めて、二月。

冬の始まりを告げるかのように、最近めっきり冷え込んでいる。


暖房器具などなく、通気性の良いこの時代の建物では寒さが一層身に染みる。



「しかしゆきちゃんが陰陽師を知ってるなんて意外だったよ〜。君の世界でもいるんだね〜」

「いるにはいるんだけど‥‥本物は見た事ないんです。映画で見たくらいかな」



う〜ん、と自分の世界の陰陽師について思い出してみれば、



「えいが?」



と首を傾げる。



「う〜んと‥‥絵巻物といった感じ?」

「なるほど〜」





縁側に二人並んで座っている。

『本物の陰陽師に会えて嬉しいですっ』

とミーハー心丸出しのゆきは、さっきからあれこれ質問しまくっている。


景時は嫌がる事なく丁寧に答えていく。



(やっぱり景時さんって優しい人だ)



「そういや、術をかける時って地面に模様を書いたり、札を取り出したりするんですか?」

「うん。普通はそうなんだけどね〜。オレの場合、いざと言う時あがっちゃってダメなんだよね」



苦笑しながら頬を掻いた。

聞けば、上がり症の景時は術を使う時に慌てないように予め術式を用意しておくのだと。

自分で作成した、陰陽術式銃に。



「それだと後は引き金を引くだけだしね〜」

「‥‥‥凄いじゃないですか」



感心しきりなゆきに「見たい」とせがまれたので、懐から銃を取り出す。


小声で何か呟いて、引き金を引けば何やら可愛らしい音がした。


そして目の前に現れたのは‥‥‥。



「俺の式神なんだ〜。動きが遅いんだけどね」

「すごい!!大山椒魚じゃないですか!可愛い〜!!」




ゆきは大はしゃぎで式神を抱き締めた。


 


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