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今日は朝から土砂降りだ。

雨は嫌いじゃない。
地面や屋根、窓に打ち付ける水の音を聴くのは好き。


‥‥煩わしい全ての音を消し去ってくれる気がするから‥‥







(てゆうかコイツの声も消し去ってくれぇ!!)













ACT1.涙雨のやむ前に







「なんでダメな訳?他に男いるから?」



元宮 ゆき、16歳
現在非常に困っております。




休み時間に一階の渡り廊下にて「人生初の告白(される)」というのを経験中。

同じクラスとは言え良く知らないし、今まで遊んだ女の子の数をクラスで自慢するような男なので、さっきから丁重にお断りしている、のだが。




(なにが「お前だけは本気だ」なんだか‥‥誰が信じるかっつ〜の)



はぁ〜、とため息を付いて相手を見る。


「遠藤くん‥女の子を遊びで傷付ける人は好きじゃない」

「だからそれはお前が気にかけてくれたらと思って‥」

「そんな駆け引き意味ないよ」

「難しく考える事ないじゃん。試しに付き合うってのもアリなんじゃね?」

「だ〜か〜ら〜、遠藤くんの事好きじゃないし」

「付き合ってみたら好きになるかもしれないだろ?」


(ならないよ!!)


相手は全く聞いてやしない。


ゆきは女子高生の平均より小さい。
155cmの身長はクラスで一番前。
「黙っていれば可愛いね」と言われるが、口を開けばイケメンすきだしボケる。

もっとも、馴々しく自分の肩に手を置く相手はそんな事知らないだろう。


(一発蹴りでも入れたいなぁ)


あまりのしつこさにいい加減ブチ切れそうになった頃。



「あれ、ゆきちゃん?」

「望美ちゃん!!っと、有川先輩!!」

「おぅ、ゆき」



天からの助けがやってきた。
嬉しくて満面の笑顔で振り返る。

一つ上だけど気さくで優しくて大好きな美少女、春日望美。
それから、ゆきの同級生の兄でカッコいいと女の子に人気の有川将臣がやってきた。



「じゃぁ遠藤くん、そういう事だから」


にっこり遠藤を見上げ手を振れば、渋々とした表情で校舎へ消えて行く。


「ふぅ‥‥」

「ゆきちゃん、大丈夫?」

「あ、うん、ありがとう」


(ホッとしたのがそんなに顔に出たのかな?)



「なぁゆき、今のって‥‥‥‥‥っと、譲」

「あ、譲くん!!」

「有川くんおぃっす!」

「兄さん、先輩‥‥‥元宮も何してるんだよ?もう授業始まるぞ」


望美達と反対の校舎から出て来た有川譲はゆきの同級生で隣の席で、仲良し。

生真面目な彼はゆきのボケに丁寧にツッコミをいれてくれる。


「ん〜なんか苛々する。授業さぼって某剣道部部員の眼鏡割りたい‥某有川とか言う人の眼鏡」

「元宮、某の使い方が違うから。授業はちゃんと出ろよ」

「固いこと言わないのっ、ゆずるん」

「‥‥っ!!ゆずるんって何だよ!」

「ゆ〜ずる〜ん」

「ゆずるん言うな!」

「はははっコイツを慌てさせるなんてすげェなぁゆき」


将臣がウケている。
顔を真っ赤にしている譲は、望美に助けを求めた。


「春日先輩からも何か言って下さい‥‥って、先輩?」


不審な譲の声に望美を見れば、一点を見つめて固まっている。


「望美?」

「望美ちゃん?」



視線を辿れば白銀の髪の子供。
強く振る雨にも動じず、望美を見つめ立っていた。



(か‥‥‥可愛い〜〜〜っ!!!いっこ欲しいよぉ!!)





「あなたが、私の‥‥‥‥‥!」





子供が口を開いて。
出てきた言葉はよく分からない。



その瞬間、激流に身体を奪われた。




涙のような雨音のかわりに凄まじい轟音を聴きながら、ゆきは意識を失った‥‥‥‥。





遠くで、
誰かが名前を呼んでる気がする‥。


 

 
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