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『だから私は―――




ここにいたいと思います。

お父さんとお母さんと過ごした世界は恋しいけど、でもね。

二人がこの世界に縁がある人だと知った時に、決めたの。





ここで暮らして三年半の間に、大切な人達がいっぱい出来ました。


友達も、お兄さんやお姉さんが。

みんな優しくて、暖かくて、愉快な人達です。






それから、一緒に幸せになりたい人が出来ました。




二人に会わせたかったな。

お父さんが弁慶さんに会ったら、何て言うのかな。

考えてみたら、かなり笑えます。







とっても綺麗な人ですが、
中身は時々真っ黒い気がするし。

笑顔は素敵なのに、
たまに裏がある気がするし。
ううん。気がするじゃなくて実際にあるんだよ、裏。


私はいつも振り回されてばっかりで、悔しいけどね。
いつか仕返ししてやるって思っても無駄なんだろうな。
返り討ちだよ、多分。



でも、誰よりも不器用で優しい人です。



私を丸ごと受け止めてくれる、大地そのものな人。





幸せにして欲しいです。

そして、世界で一番幸せにしてあげたいと願っています。






お父さんとお母さんの出会った世界の、未来を私は生きますね。





最後に、ありがとうを一杯伝えたいです。



お父さんとお母さんが出会えた運命に、ありがとう。


愛し合ってくれてありがとう。

私を産んでくれてありがとう。

私を愛してくれてありがとう。






二人の娘で良かったです。
きっと、ここに来たのも運命なんだと思います。





いつか、また会える日まで。


大好きだよ。




元宮 ゆき』
















「ゆき。ご飯が出来たわよ」

「あ、朔!今行くよ!」



パタパタと手際良く筆を片付けて、文に文鎮を乗せる。

食事が済む頃には墨も乾いているはず。



「いつか‥‥‥」

「え?どうしたの?」

「‥‥‥ううん、何でもないよ。行こう!ホラ!」

「はいはい。手を引っ張らないの」






栗色の髪を弾ませて走るゆきの頬を

一陣の暖かい風が、優しく撫でていった。





















Last ACT.大地の陽


20080314

 


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