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ゆきは掴んだ剣を振り上げる。

それは彼女が入ってくる直前まで、望美が振るっていた剣。
政子の攻撃で手から離れてしまった剣だった。




一瞬だけ見つめて、迷いを振り切るように、
自らの腹に突き立てた。


鈍く、肉を貫く音が聞こえる。


「‥‥‥‥うぅっ‥‥」


腹が灼けるように熱い。
身体の熱が熔け出しているようだ。


腹の熱の代わりに腕や足から力が抜けて来る。

それでも最後だから、柄を両手で掴んで、渾身の力を込めた。

深く、貫く痛み。

口の中から血が溢れそうになるのを堪える。








最期に見た彼の顔は。
信じられないと言うように

堪え切れないと言うように


苦しそうに歪んでいた。





私、ちゃんと笑えたかな?






泣き顔なのが哀しいけど
最期に見たのが貴方で嬉しい。


あなたに恋して私は強くなった。

だけど



あなたに恋したから、失うのが怖かった。














(大好きだよ、弁慶さん)







この想いを伝えられないままで



ごめんね。












満足そうに眼を伏せた直後、ゆきの身体は崩れ落ちた。













「いやぁぁぁぁぁ!!」









この声が、朔なのか望美なのか、もうわからなかった。


























ACT41.想いの果ての、夢


20080303

 


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