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筒がなく朝食を終え‥‥‥‥と言うよりも、九郎と朔による盛大な説教タイムを終えた。
勝手に飛び出した事、師匠に連絡させて自分は何もしなかった事、怪我を治すために出かけたなら最初から言うべきだ、と。
ゆきはひたすら謝った。
何とか許して貰うと、後は和やかに箸が進む。
「ごちそうさまでした!」
「ゆき!廊下を走るな!」
九郎の怒声もなんのその。
姿を見せない望美を心配して、ゆきは彼女の部屋を尋ねた。
部屋の前で足を止め、中に居る彼女に声を掛けようとしたのだが、話し声が聞こえてゆきは止まる。
「‥‥‥ゆ、ずるくん、がね‥‥‥わ、私の、こと‥‥‥」
「‥‥いいのよ、望美。ゆっくり話して」
話し声は望美と朔のもの。
そういえば、朔はゆきよりも早く食べ終えていたと、今になって気付いた。
きっと彼女も望美が心配だったのだろう。
「‥‥‥‥‥‥」
ゆきは黙り込む。
望美には朔が付いて、話しを聞いている。
なら自分までいれば、かえって気を遣わせてしまうだろう。
その場から離れるべきなのは分かっているのに、何故か身体は動かなかった。
「‥‥‥だから、ヒノエ殿と御守りを貰いに出かけたの‥」
「‥‥‥‥‥‥う、ん。そした、らね‥譲くんが怒ってて‥‥‥‥」
どうやら、最近嫌な夢を見続けて寝ていない譲を心配して、望美が御守りを貰いに出かけたのだと言う。
そこに案内役に着いたのがヒノエだと。
二人の会話から、おおよその事情が分かった。
(‥‥‥そして、あんな時間までヒノエといたから、有川くんは‥‥‥)
「‥‥‥ゆっ‥‥るくん、私‥‥好きだってっ‥‥‥‥‥死んでもいいって‥!!そんなの!嫌なのに!!」
望美が激しく泣いている。
子供の様に泣きじゃくっていた。
衣擦れの音がしたから、きっと朔が彼女を抱き締めたのだろう。
「今は泣いていいのよ、望美。私がここにいるから」
「朔‥‥‥朔っ!!」
(‥‥‥‥‥‥行こう‥)
ゆきは足音を立てない様に、そっとその場から離れた。
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