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何かを守る為に
他者を犠牲にする






それを非道だと

欺瞞だと言うなれば










真実、正しい道とは


一体何処にあると言うのか











‥‥‥その問いに答える術を、
私は持っていなかった







ACT26.夢から醒めた恋



 






(森の奥‥‥‥‥‥‥って、どこまで奥なのっ!?)



走って走って走って。
ゆきは随分走った。

なのに一向にめぼしいものは見えない。



政子の姿も、
何処かに行った弁慶の姿も。





方角が間違えている可能性を考えたが、否定する。


‥‥‥間違いなく、ゆきの進む方向に政子はいる。

あの恐ろしく感じる気を、間違える筈もないのだから。













『面白いもの』


見るのが怖い。



けれど、見ないといけない気がする。












こんな時、側にいてくれたら安心出来るのに。



(弁慶さん‥‥‥)





きっと彼は、政子と共にいる。

ゆきの予感は違える事が、なかった。






 

やがてぴたっと、ゆきの足は止まった。



強烈なまでの悪寒に、体が震え出す。
何度経験しても慣れる事はないだろう恐怖。


だが今回は、この身体の反応が役に立った。
この少し先に、政子がいる。と、いとも簡単に感じる事が出来るから。

そう、ゆき自身がアンテナのようになっている。









一歩踏み出そうとして、彼女の言葉を思い出した。







『気配くらい絶てますわね』





‥‥‥あの時自分は頷いた。

だとしたら約束を違える訳には行かないだろう。

完全に気配を絶つ為に、先程繁みに隠れた時よりもずっと精神を集中させる。






(臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前)




指先で組む印は九種類。

ひとつひとつを辿る様に組みながら呪を唱えれば、ゆきの周りに薄い光が顕れ‥‥‥すぐに消えた。




ふぅ、と息を吐く。
ここまで集中したのは初めてかも知れない。
どっと、疲れが押し寄せるが。




‥‥‥これで、完全に気配は絶てたはず。

後は物音さえ立てなければ完璧だ。





ゆきはそっと政子が見える場所に移動した。






  


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