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隠国、熊野

ここは死者が眠る、神聖な国









ねぇ、ここに来れば

お父さんとお母さんに、会えるかな?










例え世界が違っても、


私達は何処かで繋がっていると



‥‥‥そんな気がするよ。








ACT22.隠れ月国で見る夢は



 




「春日先輩!!」

「望美!!」

「大丈夫かい?」



真っ青な譲、将臣、ヒノエが崖を降りながら望美の無事を見つける。



「うん!大丈夫だよ!‥‥‥譲くんっ!?」



譲は一気に残りの距離を詰めて、望美をきつく抱き締めた。



「良かったっ‥‥‥!!」



‥‥‥先輩を失うかと思った。


吐息のように吐き出された言葉。
僅かに震える腕。

頭を彼の胸に押しつけられているから聞こえる、激しく波打つ心音。


‥‥‥彼にどれほど心配かけてしまったのだろう。



「ごめんね‥‥‥心配してくれてありがとう、譲くん」



感謝の気持ちが伝わるように

背中に腕を回した。


















他の皆も降りて来たのだろう。
望美を心配する声が複数聞こえて来たのに、譲が離れる気配はない。
恥ずかしくなった望美は、譲の背を軽く叩く。



「ゆ、譲くん、ちょっと‥‥‥」

「え?‥‥っ!あ、ああ、すみません!!」



飛び退く勢いで離れる譲。
二人とも顔が真っ赤だった。



「望美!怪我はない?」



朔の言葉にしっかり頷く。
一同はホッとした表情を見せた。

安心した彼らは次に、望美の隣に立つ見知らぬ青年に気付いて、首を傾げる。

白銀の流れるような長髪の、美貌の青年。



(あ、そうか。皆、この姿に会うのは初めてだったよね)



自分はこの姿の彼を見慣れていたから、ついうっかりしていた。

あのね、と、望美が彼を紹介しようと口を開く。


‥‥‥が、その前に思いも寄らない人物から声が上がった。



「白龍が望美ちゃんを助けてくれたんだよね?」

「そうだよ、ゆき」






「‥‥‥‥は?」

「何言ってるんだよゆき?‥‥‥白龍は子供だろ?」



ゆきは何を言っているのか。
意味が分からず、動きが止まる数人。

ヒノエや弁慶は、ゆきと青年の会話で何かを合点したように頷く。



そして望美とリズヴァーン。

思わず顔を見合わせた。




 


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