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師匠から以前貰った書物は物語のようなものだった。
師匠の筆蹟による流麗な文字で綴られるそれは、絵巻物でないのが不思議な位
ちゃんとした物語だった。
物語を簡単に整理するとこんな話になる。
『昔々、龍神が守りし京の都に一人の陰陽師がいました。
人間の父と辰狐を母にもつ彼は、強大な力を持ち
後に一族の氏神となりました。
彼がまだ人間であった頃、友である天狗の力を借りて
強大に過ぎる陰の気を、
呪物に封じ込めて核を造り
人型に埋め込んだのです。
そうして、『彼』は生まれました。
『父』である大陰陽師の強大な気を受け継ぎ
端麗な容姿を与えられた彼には
人形である所以に
感情がありませんでした。
彼が生まれて二年が経った頃、ひとりの娘に出会います。
娘を守る役目を天から授かり、生きる目的を掴んだ彼と
龍神に選ばれ、清めの力を振るう娘は
いつしか恋に墜ちました。
人を愛する事により、彼もまた
人として生まれ変わる事が出来たのです。
父である、大陰陽師の願いのままに。
やがて深い愛で結ばれた二人
人間になった彼と
龍神の娘は
娘が元いた世界へと旅立ちました』
「龍神の娘、って神子の事だよね。じゃあ、元いた世界って‥‥?」
(師匠は何でこの本をくれたんだろう?)
この物語を読んだ翌日に、ゆき達は鞍馬山に登る事になった。
もう、解ってしまった。
『安倍の人形の娘』
この一言で。
ACT13.天を偲ぶ、人形の娘
20070819
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