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「――望美ちゃん!後ろ!」
「はい!景時さんも気をつけて!!」
「御意〜!」
背後から猛烈な勢いで振りかざす怨霊の一撃。
望美が両刃の剣で受け止めて、押し返す。
気迫に負け、後ろに一歩下がった怨霊の腹部を、望美の刃が両断した。
それを合図に木陰のあちこちから、怨霊が現れる。
既に戦闘態勢にある彼らは一体ずつ着実に怨霊を屠る。
前回と違い空間にゆとりがある為、譲も後列で正確に急所を射抜き撃退していった。
「ゆきさん、こちらへ‥‥‥ゆきさん?」
ゆきの手を引こうとして、覗きこんだ表情に弁慶は目を見張る。
怨霊の姿に怯え、硬直していた。
涙さえ浮かべるゆきを見て、弁慶は溜め息を吐く。
「しっかりしなさい。死にたくないでしょう」
「‥‥はい、すみません」
瞳が揺らぎ、弱いながらもしっかり頷いたゆきを確認して、今度こそ腕を引く。
「───ゆきさ‥っ」
彼女の背後に迫る刃。
(間に合わないか―――)
彼女を腕の中に抱き込み、身体を反転する。
「弁慶さんっ!?」
ゆきの叫び声と同時に背中に走る熱に顔を顰めた。
彼女の肩を突き飛ばし、背後から切り掛かって来た怨霊を、薙刀で突いた。
「弁慶!!」
「大丈夫です、九郎。君こそ気を抜かないで」
じわじわと痛みが広がるが、まだ大丈夫だと判断を下し、薙刀を構え直した。
弁慶が動けなかった自分を庇い背中を斬られたのを見て、ゆきの心臓が大きく跳ねた。
その後何度か応戦していた弁慶だったが、背中を流れる紅いものが地に溜まり始めた頃。
片膝を付いて、崩れて。
「弁慶さんっ!?‥‥‥‥弁慶さん!!」
咄嗟に駆け寄り、弁慶の身体を寸での所で抱きとめる。
だがゆきが男の体を受け止められる筈もなく、抱えた弁慶ごと尻餅をついた。
背中に回した手のひらに、べっとりと滑った感触。
「何を、しているんですか」
「弁慶さん、喋らないで!」
「早く逃げなさい!!」
弁慶が強い目でゆきを見据えて、身体を起こそうとした、時だった――――
「‥‥‥っ!!」
「あっ‥‥‥」
突如として身体を押さえ込む様な、強烈な重圧。
身動きが取れなくなってしまった。
その場にいる、怨霊を除いた全員に、束縛の術がかけられていたのだ。
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